文春e-book<br> ジハーディ・ジョンの生涯

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文春e-book
ジハーディ・ジョンの生涯

  • ISBN:9784163904702

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内容説明

著者はかつて、当局にイスラム過激派と疑われたために職も婚約者も失ったと訴える、ムスリムの青年を取材したことがあった。クウェート難民としてロンドンで育ち、大学でITを学んだ礼儀正しい青年、ムハメド・エムワジは数年後、イスラム国の黒覆面の処刑人「ジハーディ・ジョン」となり、湯川遥菜さんや後藤健二さんらを斬首することになる。エムワジはなぜ、凶悪なテロリストになったのか。「ジョン」と会った唯一のジャーナリストによる決定的評伝。

彼の足跡を辿ると、欧米社会で育ったムスリムの若者たちが偏見や差別にさらされ、将来に絶望する日々のなかで過激思想に染まっていく状況が見えてくる。テロ対策の名のともにイスラム社会に行っている、抑圧や監視が若者たちの先鋭化につながり、ジハード戦士を生み出す土壌になっている、と著者は指摘する。ジハーディ・ジョンの替えは、いくらでもいるのだ。「クローズアップ現代」でキャスターを務めた、国谷裕子氏の渾身の解説も必読!

【目次】
序章 わたしは「ジョン」と会っていた
第一章 クウェートから来た少年
第二章 イスラム過激派のネットワーク
第三章 MI5とアフリカの角
第四章 素顔のエムワジ
第五章 監視対象
第六章 シリアへの道
第七章 世界を震撼させた斬首
第八章 テロリストの逆流
最終章 「ゼロ・トレランス」の罠
解説 『ジハーディ・ジョンの生涯』を読み、後藤健二さんを想う (国谷裕子)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

とろこ

61
本書の副題は、「テロリストができあがるまで」らしい。ジハーディ・ジョンこと、モハメド・エムワジの蛮行は、決して許されることではない。だが、大学生時代までの彼は、「礼儀正しく思いやりのある青年」だった。そんな彼を、イギリスに住むクウェート難民でムスリムだという理由だけで、過激思想の持主だと決めつけ、あらゆる嫌がらせをして職を奪い、婚約を2度も破談にし、家族との関係まで壊したMI15。彼らの過度の干渉(などという言葉では生易しい)も、テロリストを産んでしまった一因ではなかろうか。様々な難問を提起する一冊。2017/11/18

しゃが

29
衝撃の出来事、後藤さん殺害のISの黒覆面のジハーディ・ジョンはモハメド・エムワジというクウェート難民の息子であり、イギリス国籍だった。ムスリムの若者が偏見や差別により、将来に絶望し過激思想に惹かるが過激派ではなかったらしい。が、保安部の執拗な監視から渡航の自由、仕事、婚約者を失う。その抑圧や監視が先鋭化、過激化につながっていく。決して彼らを容認できないが、第二のジハーディを生み出す根底には紛争、宗教、信条からの被害も一因では…。報復(人質への虐待や殺害)の連鎖の終焉が見えてこないことがあまりにも辛い。2016/09/02

ののまる

11
MI5のスパイ容疑や締め付けに怯えるクェート難民家庭の大学生がイスラム国の斬首処刑人になるまで。処刑前の後藤さんのまっすぐな目が辛い。人質となったからこそたくさん世界に伝えたいこともあったろう無念さ。先日、イギリスがテロ対策に協力するムスリムを大幅増員したと発表がありました。スパイはイスラム法では許せない行為であるというし、イギリスのムスリム社会を一層分断していく気がする。イギリスのテロ対策が次々とジハーディ・ジョンを生むのでは・・・。2016/09/28

DEE

6
普通に生活してる国で、ムスリムだからというだけで嫌がらせを受けたり、旅行を制限されたり、テロリストの濡れ衣を着せられ結婚までご破算になったら、それは恨みもするよな。 そこに手を差し伸べたのが後にISとなっていくグループだったら… 力で強引に押さえつければそれだけ反発も強まる。 それに加えてイスラム教への無意識的な怯えと根深い人種差別。 やってることはどこぞの核兵器を飛ばしてる国と大差はない。 まずはイスラム教=テロリストという間違った見方を根本から変えていかなければ。2016/11/26

sasha

5
イギリス治安当局による、ムスリムの若者たちへの嫌がらせがえげつないわ。確たる証拠もなくテロリスト扱いだし、「こっちのスパイにならなきゃ嫌がらせするぞ」ってさぁ。ジハーディ・ジョンこと、モハメド・エムワジがどの時点で過激主義に感化されたのかは不明だけれど、イギリスの治安当局のような嫌がらせをしていたら国内で不満を募らせ、憎しみを育てる土壌を作るだけじゃないのか。就職も結婚も妨害されるっておかしくないか?西洋は自分たちの手でテロリストを生み育てているようなものかな。2016/09/19

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