内容説明
東西、古今の「事件」に材を採った、十蘭の透徹した「常識人」の眼力が光る傑作群。「犂氏の友情」「勝負」「悪の花束」「南極記」「爆風」「不滅の花」など。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
37
慣れては来たけどあいも変わらぬ唐突な幕引きです。けどそれは決してつっけんどんではなく語る所は終わったんだというクールな所作に感じられます。ともあれ今回は『公用方秘録二件』の中の『鷲(唐太モイガ御番屋一件)』に、ぐっと来てしまった。藩の用命で樺太の国境線に住み着いた二人の侍、いや侍などという大層なイメージではなく青年?闘って死守するのではなく実直に国境にしがみつくその姿と幕末の日本から忘れられてしまうその運命に本当にぐっと来てしまいました。2014/10/07
しろ
11
☆5 日本の作家とは思えないほどの雰囲気を持つ久生十蘭。この一冊では、ノンフィクションやノンフィクション風が多くて、その中でも著者らしさが出ているのは凄いと思う。ただやはり完全フィクションが読みたい。「事実は小説より奇なり」かもしれないが、「小説は事実より面白いなり」。「勝負」はさすがに面白かったけど。2013/04/19
YO)))
11
河出から,5冊目の十蘭選集.帯に『透徹した「常識人」の眼力が光る傑作群』とあるが,成る程,フラットな語り口で書かれた記録小説風の作品が目に付く.轢死体の様子に至るまで容赦なく事件を描き出す「プランス事件」が取分け印象的.一方で最もフィクションらしい一編,「勝負」が凄い.冒頭,気怠げな午睡の場面から,ラストのドッグファイトまで,息もつかせぬ展開で,戦争の元に奇妙にして強固な絆で結ばれた二人の男のデッドロックな友情を描き切る.この題材であれば,分厚い長編が書けそうなものだが,一切の出し惜しみなく.2012/06/16
Aminadab
6
傑作集五冊目。「勝負」。親の世代の因縁が絡む複雑な三角関係を飛行機ネタできれいにまとめている。二つの世界大戦が一望できる視野の広さがすごい。戦時下の作「爆風」と「鷲」はよく発表できたな、という感じ。後者で幕末の樺太に送られて忘れ去られる二人の松前藩士は、明らかにニューギニアあたりの日本軍部隊を思わせる。前者は43年5~7月に連合軍の爆撃にさらされたマルク諸島の状況をごく正直に描いている。B-24の爆弾もさることながら、低空を這ってくるブリストル・ボーファイターの機銃掃射が厭だ、というのはいかにも切実。2019/04/19
rinakko
5
再読。2017/07/02