内容説明
一枚の切符、五ドル紙幣、そしてお腹の中にいる赤ん坊――それがヘレンのすべてだった。男に捨てられた傷心を抱き列車に乗った彼女にとって、前の席で楽しそうに語らう若夫婦と寄るべもない現在の自分との落差はあまりにも大きかった……彼らは親切にしてくれ、ヘレンの心も次第になごんでいった。だが、列車転覆という思わぬ事故でヘレンの運命は一変した。不思議な運命の糸に操られた女の辿る物語を流麗な筆致でつづる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
275
★★★★★ 個人的にはアイリッシュのベスト作。 アイリッシュならではのサスペンス的要素も備えているが、儚い純文学作品のような香りが漂う傑作だ。 もちろんビルがパトリスに車の中で想いを打ち明けるシーンがハイライトだが、それとは別に母親のグレースに助演女優賞を捧げたい。 ハッピーなエンディングとは言えないが、いつか真犯人が見つかり本当の幸せが訪れることを祈るのみ。2022/07/03
セウテス
67
〔再読〕病院のベッドでヘレンが目を覚ますと、自分はパトリスと思われていた。ヘレンは男に捨てられ、身重の体で列車に乗った。車内で同じく妊娠しているパトリスと知り合うが、その後列車は事故に遭っていたのだ。ヘレンは人生をやり直すべく、パトリスとして生きる決心をする。何の悪意も野望も持たない、普通の女性が主人公なのは珍しい。幸せな毎日から、いつ入れ替りがバレてしまうのかというサスペンスを堪能していたら、さすがにアイリッシュ作品、それでは終わらない。心からの思いや叫びが、音楽の様に響いてきて、物悲しさに包まれる。2018/03/13
Ryuko
26
お金もなく、頼る人もなく、おなかに赤ちゃんを宿すヘレンが列車で若い夫婦と出合う。不幸な列車事故により亡くなった若夫婦の妻と間違えられ、入れ替わる。いつばれるのか?というサスペンス。なんとなく既視感のあるストーリー。映画化、ドラマ化されているようなのでそれを見たのだろう。冒頭のモノローグが悲しい結末を暗示する。不幸で愚かな女性が入れ替わった家族の善意にがんじがらめになっていくのが哀れ。。2018/10/12
bapaksejahtera
18
「幻の女」始め気に入らぬ作品を読んだので敬遠していたアイリッシュであるが、本作はOK。但し正当とは言えぬやり方でせっかく幸福を掴んだ女が、案の定悪党に強請られる作品。年を取ると語り手が窮地に陥り、ハラハラして読むのはかなりきつい。ペリイ・メイスンのように結末安心の娯楽作品の方が読書は楽しい。男に追い出された妊婦が、遥々大陸横断鉄道に乗ってカリフォルニアに流れる途中、列車事故にあって、偶然のことから新婚の夫の裕福な実家に赴く途中の夫婦と入れ替わるスタート。明治生まれの訳者の古めかしい文章も嬉しい作品だった。2025/11/27
koo
11
主人公ヘレンが明かされたくない素性を盾に脅迫されるストーリーで若い女性主人公が犯罪者である所が珍しい作品です。アイリッシュらしい情感たっぷりな文体でサスペンスフルに描かれていますし悲劇に翻弄されるヒロインを描くのが上手いなあと思いますが主人公が犯罪者である点が引っかかりなかなか感情移入できませんでしたね。真相が二段構えになっている所は意外性たっぷりですがラストの反転は必要だったのか疑問に感じます。余韻を残したのでしょうが主人公に共感できないと不満が残りますね。2024/05/13
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