内容説明
翼よ、あれは何の灯だ? リンドバーグよりも一足先に大西洋横断飛行に成功しながら、アフリカに着陸してしまった日本人。アポロ11号に乗って月まで行き、着陸に成功したのに、月に降りられなかったクルー。歴史に名を残した幸運な人の陰には、もうちょっとで有名になれたはずの人がきっといた。陽の目を見なかった運のない人々に、愛を込めて――。著者新機軸の、仮想伝記小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tomi
19
歴史的偉業の陰には、もう少しで名を残せなかった人たちがいるはず。そんな陽のあたらなかった悲運の人を描いた短篇集。一番面白かったのは「山内一豊の隣人」。禄高も下だった隣人の一豊だけ、とくに武功も変わらないのにどんどん出世して行く…という運のなさ。この主人公・船戸持義や「翼よ、あれは何の灯だ」の飛田鉄之助などいかにも実在人物を元にしてそうだが、あとがきによると「すべて架空の人間」だとか。清水ハカセ、やはりクセモノです。2013/04/26
紫伊
13
偉業を成し遂げた人がいる限り成し遂げられなかった人がいる。そんな多数大勢の人達の物語。その人だってその界隈では抜きん出た人なのだ。でも才能に打ちのめされたり周りの人の力だったり目立ちたくなかったり味覚だったりで歴史に名を残せなかった。でもそれはとても人間臭くてすきだなあ。味覚や感覚のズレで名を残せないのは多分色々あるんだろうなぁと思った。それでも1番気持ちを掴まれたのは最後の一作。どれが1番心に響いたかでその人の考え方の一片が見えそうで読んだ人の感想が聞きたいなと思った。2023/11/17
かしまさ
7
おもしろ切ない系。頑張りを認めてもらえなかった惜しい人たちの話。こうなりたくないが、こうなる人のが圧倒的多数だよなぁ。2016/09/16
梅干し夫人
4
もしかしたら歴史の表舞台に立つことができていたかもしれない人たち。斬新な構成がおもしろかったです。2015/09/29
bunca
3
実際に存在したかのようなリアリティを感じる登場人物ぞろいでした。成功者の陰にはちょっと運がなかっただけに、こんな風に歴史の表舞台に登場できなかった人が大勢いるんですよね。「山内一豊の隣人」が、お隣の一豊に張り合うもどんどん差をつけられていく様が興味深かったです。2011/07/11