内容説明
16歳の時からひとつ年下のミリアムと逢瀬を重ねて7年、ポオルは残酷にも彼女の心を弄んだ。母親は53歳になっていたが、人妻クララに思いを寄せるポオルに安堵していた。二人の女性に甘えるポオルの運命は、母親の死で愛情の決算を強いられる……。著者の出世作である自伝的長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroo
1
非常に端整で、美しいしずけさがあり、この上なく人間的で、人生の哀しさと苦渋と孤独であふれてかえっていながら、頑迷なほど芯が強い。不幸と貧乏に慎ましく耐えながら、明るく生きる母を生命全体で愛し、母なしでは生きていけないと感じる息子。ポールの魂だけを宗教的に愛するミリアムと、ポールをひとりの男として、世俗的に愛するクララ。その4人を中心にして、取り囲む人々の生きざまも含めてすばらしい語りで一気に読ませるすさまじい傑作。色彩感覚と情景描写が優美で鮮やか。まじツボった!淡々とドラマティック!2012/11/09
caster1
0
母と息子の濃密なつながりが、一見穏やかで微笑ましいように見えるけど、どこか怖いものを感じる。愛とか甘えという言葉で片付けられない、お互いを想う気持ちの強固さ。2011/02/10