内容説明
中産階級の出身で教養のあるガアトルウドは、性的に魅力のある炭鉱夫モレルと結婚した。いつしか夫への愛もさめたモレル夫人にとって、美しい息子たちが彼女の恋人的存在となっていた。長男ウィリアムの突然の死に打ちのめされた母親を慰めるのは、絵の上手な16歳の次男ポオルだった。
感想・レビュー
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keroo
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母ガアトルウドと旦那、ふたりの間に生まれた息子たちとの関係が描かれる。(巻末あたり以外)特に大きな事件もなく、非常に淡々とした描写が重ねられるのに、まったく退屈することなく、むしろ優美な自然と人間の慎ましい日常的な営みが、心にすっと鮮やかに浮かび上がるときの、何とも言えない描写の静けさに心打たれる。色彩感覚も素晴らしい。はじめの5頁あたりから、一気にハマれる、この不思議。ドラマは小さくても、的確な語りがあれば面白いんだ! 吉田健一氏の訳のおかげでもあるのだろうが、不要な人称代名詞が多いのが若干気になる。2012/11/02