内容説明
「あれが最後ね。てっきり夜中に落ちるんだろうと思った。風の音がしてたから。きょうには落ちるでしょうね。そのときに、あたしも死ぬわ」老画家が命がけで彼女に贈った希望とは。表題作のほか、「感謝祭の二人の紳士」「芝居は人生だ」「金のかかる恋人」など、O・ヘンリーの名作短篇14篇を新訳。ニューヨーカーたちの魂をふるわせ、優しく暖め、温かく笑わせた選り抜きの物語たち。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
75
新訳で印象深かったいくつかの言葉が変わっているのに気づきました。言葉選びに気を配っているのが伝わってきます。ここに収録されているものは、すんなりとオチをわからせてくれないものも多い気がします。読み返してああ、そういうこと!とじわじわとこみ上げてきた話もありました。好みは「心と手」「ユーモリストの告白」。ラストの「更生の更生」は題名が変わってますが「よみがえった改心」。これは再読でもやっぱり好き。新訳のほうがテンポもいいと思います。久しぶりのO.ヘンリー、堪能しました。2017/09/18
nuit@積読消化中
74
何十年ぶりかに再読してビックリしたのは「最後のひと葉」の記憶が違っていたこと。しかも肝心な陰の立役者の存在がすっぽり抜けており、恋人同士だけで構成されたお話だと思ってました。実はこんなにも素敵なお話だったとは!就寝前にホロリとしちゃいました。他には「心と手」「更生と再生」が印象的。世の中まだまだ人間捨てたもんじゃないな〜と思わせてくれます。引き続き3冊目を読みます〜。2016/04/12
びす男
66
皮肉が利いていて、あたたかい。ヘンリーならではの味わいがある珠玉の短編集だ。個人的に表題作はもちろん、「金銭の神、恋の天使」や「更正の再生」が気に入った。「金で買えないものがあるかと思って探したら、百科事典をYの項目まで見てしまった」というセリフが面白い。2016/08/03
aika
58
ニューヨークの片隅でそっと生きてきた老いた無名画家が、生を諦めつつある病床の若き女性画家ジョンシーに託した宝物を鮮やかに切り出した、短編の名作「最後のひと葉」。その他に収められている短編は、殺人犯が暗躍するブラックユーモアな話が多い中で、粗野で横暴だけれど、人を信じきってきまう憎めない男の恋をコミカルに、そしてちょっぴり寂しく描いた「ピミエンタのパンケーキ」にほろりとしてしまいます。お金に物を言わせる実業家が、息子のプロポーズにビッグサプライズを決行する「金銭の神、恋の天使」には思わず笑みがこぼれました。2020/11/09
emi
39
最後のひと葉は、オチよりもその途中が印象的で、読み終わってまさかこんな話だったとはと驚いた、O・ヘンリーの傑作選。賢者の贈り物を始め、私は長らく「いい話」だと認識してきましたが、訳者解説でそうではないことを知りました(もちろん一例だと訳者も書いてます)。ユーモアも奥深いものなんだなぁと感じる14編からは、人の行いはもっとばかばかしく愚かでもあり、それでいて愛おしいものだ、という気持ちをつづっています。ブラックユーモアとは違う、波乱で最後は笑える作品の数々。面白さの引き出しがひとつ増えた気がします。2015/12/23
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