内容説明
かつて大学講師であった著者は失われた記憶を求め、心を閉ざす息子とともに大陸横断の旅へと繰り出す。道中自らのために行なう思考の「講義」もまた、バイクの修理に端を発して、禅の教えからギリシャ哲学まであらゆる思想体系に挑みつつ、以前彼が探求していた“クオリティ”の核心へと近づいていく。だが辿り着いた記憶の深淵で彼を待っていたのはあまりにも残酷な真実だった…。知性の鋭さゆえに胸をえぐられる魂の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
ロードムーヴィーのような話だと思って読み始めた。父と息子と、父の友人夫婦がバイクで田舎道を進んで旅行する。友人夫婦はまったくメカに弱い。バイクで旅行をするのに、知識がないのだ。それを説明すべく、オートバイの部品や仕組みなどの単語や説明が長く、少し辟易してきたことに驚くべきことを作者は語る。こんな話とはまさか予想していなかった。読んでいるこちらが、胸が痛み、頭が混乱する。彼と旅行をともにしている息子はこの事態をどう捉えているのだろう。タイトルからは考えられない内容だ。ともかく下巻へ。2016/06/10
やいっち
74
息子のクリスの行く末が気になる(と言いつつ我々は知っているのだが)。パイドロスなる謎の人物の正体は早々に説明されるが、不在の存在者パイドロスの本当の正体は、語り手も分からない。世話(メンテナンスの手間)の焼けるオートバイでの、掻き消された過去を求めての旅は続く。ちなみにオートバイ修理技術も物語を読み解く鍵になっている。2021/06/01
harass
52
十数年ぶりの再挑戦本。発狂し記憶を失った著者の大学教授は、失われた以前の人格と記憶を捜しに、息子と友人夫婦の四人でバイクの旅に出る。紀行文のようで哲学エッセイでもある。よくありがちな既存の哲学用語をまくし立てるようなこともなく、バイク修理からテクノロジー、理性の問題などを語る。独自の概念を提唱していて、語り口がうまくページをめくってしまう。題名からキワモノと受け取るかも知れないがほかに類を見ないような書き方の本。名著とされるしその価値もあると思うが、小説ではないのでなぜガーディアンリストにあるのかと疑問。2016/05/05
デビっちん
22
再読。バイクのメンテナンスというと、機械の専門的な知識とそれを上手く扱えるかということが必要と思われますが、そこには心が関係しているとの記載が目につきました。機械がよく動くのは、平穏な心が具現化している結果で、それは逆も然りで、メンテナンスをきっちりしていれば、心に落ち着きが生まれてくるようです。メンテナンスを技と読み替えると、技のキレ味を高めたかったら心を落ち着かせれば良いのかなと思いました。2019/04/19
デビっちん
22
バイクでアメリカ大陸横断しつつ、自分探しの旅をしているノンフィクションです。15歳で大学入学するほどの知能を持ちながら、中退を余儀なくされ、その後は……。バイクのメンテナンスというとテクニカルな要素が一辺倒かと思いきや、そうではなく、そこに芸術性が見出されるところに興奮させられました。特に第二部の後半です。2018/10/02
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