内容説明
「あたしは絶対、人とは違う。特別な人間なのだ」――。女優になるために上京していた姉・澄伽(すみか)が、両親の訃報を受けて故郷に戻ってきた。その日から澄伽による、妹・清深(きよみ)への復讐が始まる。高校時代、妹から受けた屈辱を晴らすために……。小説と演劇、2つの世界で活躍する著者が放つ、魂を震わす物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
484
芥川賞以前の作品で三島賞の候補作となったもの。タイトルはなかなか過激で煽情的なのだが、内容も負けていない。今時には珍しいくらいに情念的。中上健次を思わせる。もっとも、この人の作風が常にこうというわけではなさそうだが。自らの美貌に縋り付くあまりにアイデンティティを喪失する姉の澄伽。一方、その陰にいながら自己の道を進む妹の清深。この小説は、社会との違和の中で行き場を無くした(求める)怒りの表出の物語であり、また本質的な孤独の物語なのだろう。2017/10/11
ehirano1
189
佐藤優氏が自身の著作で紹介していたので手に取りました。まあ、のっけから不穏というか嫌な予感全開で、読むことを何度も躊躇してしまうのですが(=脳は「止めとけ」と信号を出しているようでした)、なぜかページを捲る手が止まらない止まらない、悲しいくらいに止まりません。その理由を言語化するのは私には困難なのですが、限界ギリギリの感情を生きる群像劇に圧倒されました。その意味で今までに経験のない余韻に呆然となりました。2024/12/14
さてさて
154
『秘密。家族の秘密。絶対に口外してはいけない秘密』。待子の過去、穴道と澄伽、穴道と待子というように『家族』内の他の関係性にもあっと驚くような裏側を見せながら和合家4人のドタバタ劇が描かれるこの作品。そこには、元々戯曲として描かれた作品が持つ独特の雰囲気感が引っ張る物語の姿がありました。突然のグロテスクな表現に引いてしまうこの作品。本谷さんの絶妙な表現の連続に酔う他ないこの作品。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」というキョーレツな書名に決して負けることのないまさかの展開の連続で読者を魅せてくれる作品でした。2026/07/05
新地学@児童書病発動中
135
女優になることを目指して東京に行っていた主人公の女性が、両親の死のために田舎に帰って来るところから物語が始まる。自分が特別であると思っている主人公が痛々しい。他の登場人物たちも屈折したところを抱えていて、読んでいると胸が塞いでくる。印象的なタイトルは何を示しているのだろうか。自分が特別でないと気づくことから、新しい人生が始まると思う。その意味でこの物語は閉塞状況からの突破の物語だと言える。2016/07/21
優希
130
痛くて、熱い。朧げな輪郭が読み進めていくにつれ、熱を帯びて形が見えて来るだけでなく、体に突き刺さってくる世界観があります。登場人物たちの背景が迫るのみならず、焦点が変わることで語られるそれぞれの人物像が理想と現実を行き来するようでした。痛々しさと故郷を嫌う嫌悪感が強くぶつかってくる作品です。笑うこともできず、ただその熱量の中に体を投げ出してしまうような危険さがありました。魂が熱に飲まれていく感覚は嫌いではないです。2016/07/13




