内容説明
第二の犠牲者となった番頭の横田が握りしめていたのは、譜本『綱館』の切れ端であった。これはいったいなにを意味しているのか? しかし捜査は進展のないまま、安東流家元・安東喜左衛門の傘寿記念の大演奏会の日がやってくる。それはまた、一連の惨劇の幕明けの日でもあった……。芸に生きる者たちの妄執と悲劇を華麗に描き、名探偵・伊集院大介を世に送りだした、第2回吉川英治文学新人賞受賞の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MATHILDA&LEON
13
長唄、三味線の伝統芸能とは全く無縁であったが、この作品で、『芸』の奥深さや、そこに一生を捧げなければならない人間達の苦しみ等が少しだけ分かった気がした。探偵の伊集院大介、下巻で存在感を発揮。人間は怖い生き物だと痛感。2014/05/30
あおさわ
9
激しく哀しく深い感情と得体の知れない美に翻弄された人々の結末。読みはじめた時には想像しなかった余韻あるラストでした。よかった。2010/11/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
8
上ではBL作品かと思いました。 下に入ると,一転,三味線の家元の家での複雑な家族を背景にした連続殺人事件になっていきます。 あるいは,最後は連続自殺事件なのかもしれません。 伊集院大介が登場するが,最後の最後まで脇役です。 特に,上では,主人公は家元の子供たちだったのが,最後に主役逆転。 吉川英治文学新人賞受賞作品なだけあって, 小説としての完成度も高いということなのだろう。 透明感ある伊集院大介が,それでも人間性を重視しているのが特筆できる。他の名探偵とは一線を画すると思う。2012/02/13
goldius
7
栗本薫は芸術を正しく理解してる教養人です2008/01/22
バジル
6
思ったより推理って感じではなかった。アリバイ工作とかはちょっとあったけど、ほとんどが旧家の複雑な人間関係で、それを読み解く伊集院は探偵と言うより心理学者の様。これが第一作目って事だから、この先変わって行くのかな。『芸』に見いられてしまった人々の特異な心情を、驚くほど詳密に著すその筆力に感服。2019/04/19