内容説明
日本古典文学の一大ジャンル説話文学の領域に登場した近年新発見の魅力ある作品の全訳注。風雅な生活を送った大斎院も、出家し往生を遂げる。恐怖・病・飢えなど当時の人々の生活感を投影した話や観音・毘沙門・吉祥天女の霊験奇瑞(れいげんきずい)の逸話が展開する。貴族子女の啓蒙書として編纂され、王朝文化の雰囲気を醸(かも)す仏教説話24話を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鹿
0
上巻の歌人説話も、(前半は)雅やかな雰囲気で好きだったけど、下巻の雰囲気も好き。2014/05/06
もちもち
0
なんていっても、第六十七話の、観音替信女殖田事の面白さ。観音さま、信女が((観音のせさせ給へることなめり))まで気づいたのに、なにも泥まみれの姿で登場しなくても…そこは良いにしても、両手に苗を掴んでるなんて!なんともユーモアちっくで面白かったです。観音様の素晴らしさと、その自己主張が相反する印象でした。毘沙門の描写も好きです。藤六のことも、ここから興味をもって藤六集なんかも読んでしまいました。たくさんの興味が埋まっていました。2013/02/02
山がち
0
上巻は歌物語が多かったのに対し、下巻は仏教説話が多くなってきて全体の雰囲気も変わってきたように思う。鷹狩が崖から落ちかけたが、仏が蛇として現れ何とか助かることができた有名な話などもあった。特に印象的だったのが仏教説話でありながら、いわゆる下世話な直接的な描写があったことである。今まで読んだ古典作品の中でもここまで直接的なものはなかったため、本当に驚いた。この点に代表されるようにん、単に仏の霊験の話にとどまらず人間らしさが色濃く描かれていて、非常に興味深くまた面白い。説話文学にある懐の深さが強く感じられる。2012/08/11