内容説明
風雲急を告げる幕末、公家密偵使・少将高野則近の東海道東下り。大坂侍・百済ノ門兵衛と伊賀忍者を従えて、恋と冒険の傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
99
面白かったです。歴史小説ではなく、時代小説で、こんな作品を書いてたのかと思わされました。軽快で、主人公が武士ではないというのが鍵になるのではないかと。急遽武士の実態を知らなければならなくなった公家たち。そんな中で江戸に下ることになった高野則近。伊賀忍者を伴っての道中に甲賀との戦いあり、雅な恋ありとめまぐるしい展開で目が離せませんでした。大坂薬問屋から始まり、東海道中の旅人となるわけですが、武士でも町民でもない立場での幕末の描き方が興味深かったです。筋的には娯楽的ですけどね。2016/09/22
レアル
60
最初は本の分厚さに圧倒されたけど、読み易いし軽快なタッチで描かれていてあっという間に読み終えた。確か「梟の城」の次辺りに書かれた初期の作品。時は幕末。京の公家で、自家の経済的な理由から大阪の商人の養子となった若き右近衛少将藤原朝臣高則近が、粟田青蓮院門跡より極秘で江戸まで行き情勢を調べるよう命じられて出かけるといったフィクションもの。軽快過ぎて肩透かしを食らいそうだが、たまにはこういうモノも良いかな。。2017/06/13
kawa
31
主人公は剣は強いが貧乏な美男子公家。幕末期、朝廷からの密命を帯びて京から江戸へ下る旅を描く、一種のエンタメ・ロード・ストーリー。最初、司馬先生にしては薄い味付けの印象で700頁・30編の大作、最後まで読めるかと心配。しかし、どうしてどうして、読者をエンタメ司馬ワールドにいざなうさすがの出来でした。私としては珍しめで、日に2,3編長い期間のお楽しみ読書でした。 (読書メーター読了1000作目)2019/01/26
時代
18
単行本で700弱頁はぶ厚い過ぎw持ち歩くのに苦労した訳で。時は幕末、武士の権威が落ち始めた頃。右近衛少将高野則近は、公家である事を隠し上方から江戸へと藩幕体制の市井調査の旅に出た。道中様々な人に会い事件に巻き込まれ、命を狙われる。が、腕に覚えのある則近は刃で難なく切り抜ける。果たして無事江戸にたどり着けるのか。一話読み切りで話が展開するのでTV時代劇を観ているような感覚。初期司馬さんの痛快エンタメ時代小説でした◎2016/10/01
コジターレ
8
久しぶりの司馬遼太郎。軽やかに物語が進んでいくので、700ページ弱あるが、一気に読めた。公家らしくない、かといって武士のような囚われもない主人公が、気ままに自由に任務を果たしていく様子が小気味良い。立場がありながら、程よく男気と優しさと好色を兼ね備えているあたりが魅力的だ。2021/02/03