内容説明
ヨーロッパ各地で頻発する、ユダヤ人を標的としたアラブの爆弾テロ。その黒幕を追うイスラエル情報機関は、周到に練りあげた秘密作戦を開始した。一人のアラブ人テロリストを拉致したイスラエル側は、イギリス人女優チャーリィに接触し、協力を依頼する。彼女の任務は、ある人物になりすますことだった。厳しい練習を重ね、綿密に人格をつくりあげたチャーリィは女優としての全才能を賭けて危険な演技に挑んでゆく!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
100
イスラエル人とパレスチナ人との闘いはハンムラビ法典の復讐法の“目には目を、歯には歯を”そのままの歴史だ。そんな闘争にイギリス人女優をスパイとしてパレスチナに潜入させ、テロリストのボスの居所を突き止め、殲滅させるという、とても魅力的かつ驚きの内容だ。その国の文化や風習を頭と身体に叩き込み、生活に溶け込み、重要な情報を自国に漏洩させる、つまり24時間、他人を演じなければならないのがスパイ。それを演技を職業とする女優にさせる、この誰も思い付きそうで思い付かなかった設定を持ち込んだのがル・カレの着想の凄さである。2023/06/14
ネムル
6
ル・カレ×イスラエル・パレスチナ問題。イギリス人の作者がちゃんと自国の非道な三枚舌を書いている。2024/06/14
Taxxaka_1964
5
面白かったが、ディテールにこだわり過ぎてて、少し冗長な印象も受けた。が、チャーリーが、発見され、スパイの仲間として育てられる過程は息を呑む展開だった。2024/08/22
コージ
5
最近女性を主人公にした「震えるスパイ」「戦場のアリス」「潜入モサドエージェント」と諜報機関を職業とした女性の壮絶な冒険小説を読んで、じゃあラスボス的な感じで本作品を読んでみようと思った。ル・カレの小説は大昔スマイリー三部作の第一冊目の途中で挫折した苦い経験があり不安だったがなんとか読み終えた。感想は下巻も読んでからにするとして、やっとル・カレの小説が読める年齢になったんだと思えた。2020/05/12
hit4papa
5
女優をつかったスパイ活動を描くエスピオナージです。非情に長く展開の遅い作品ですが、何気ない会話や仕草が重要な伏線なので、軽く読み飛ばすことができません。読了するのに時間がかかる分、それに見合う価値は十分あります。途中退屈でも投げ出さず、最後まで読み通して欲しい作品です。