内容説明
逃亡の途中、左兵衛は飢えから腐敗した鯨を食べて落命。五郎治は一人残され、幾度も絶望しながらついには帰国する。運命に抗(あらが)い生き抜いた男を、史実に基づき圧倒的な筆力で書き上げた歴史ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読特
45
冒険小説だった前巻、後半は歴史小説に変わる。展開は早く情報量は多い。それでもすいすい進む。物語の本筋に必ずしも必要ではないと思われる場面での情景描写その部分も決して退屈ということもない。記録を丁寧になぞろうとする姿勢がみられる。巻末の覚書に「史実に忠実にありたいと願った」という著者の言葉。それでも、調べつくしてもわからない部分はあっただろう。こうであったろうと作者が信じて書く。歴史小説の楽しみ方は、史実と物語の組み合わせであるという前提を忘れないこと。知識をつけながら自分も想像してみることだ。2020/01/01
James Hayashi
33
自分とは縁のない医学史の一人物であるが、想像を交えながら見事に描き出しのめり込むように読み上げた。とにかく圧倒された不運の時代のシベリアでの暮らしを描いた前編と異なり、帰国後の彼の生活の糧とした種痘法とその時代背景。その上下巻のギャップといい、医学として流布させる事を拒む彼の態度などを後世から望むと、利己主義に閉じこもる五郎治の生き方を不憫に思う。日本各地を襲った天然痘の予防が意外な形で日本に入ってきた事には驚かされた。 2016/04/13
まーみーよー
21
面白かった。下巻の前半は五郎治のシベリア抑留から帰国まで、後半は種痘師として生きる姿を描く。五郎治は強靭な意志と明晰な頭脳をもった人間で決断力と行動力も強運もあるのだが、どこか一匹狼のように思える。ロシア滞在時に天然痘の種痘術と出会い、帰国後数年してからの天然痘流行で、請われるままにロシア時代の記憶をたよりに見よう見まねで種痘術を行う。その後医学の貢献への理念はなく種痘師として対価を受けとる様は苦労を重ねたロシア帰りのプライドなのか、どこか物悲しい。人間臭い五郎治の様子がうまく描かれているなあと思った。2020/06/20
mondo
20
北天の星は、吉村昭の記録小説を代表する作品の一つである。江戸時代に漂流し、ロシアに拿捕されたのち、日本に生還する五郎治の生涯を描いた小説だが、シベリアで得た種痘を日本に戻って使用した最初の人物だったことを知る機会ともなった。もし、五郎治が種痘を日本に広めていたら、公式に種痘を使用した時期は25年も前になり、多くの命が救われたことになる。この話は歴史の影絵でも紹介されている。
ねんまに
13
常軌を逸した圧倒的な面白さだった。ロシア船に拘留されて5年間ロシアに監禁され、2度の脱走を試みるも失敗、それでも希望を失わずに帰国を果たした五郎治の強靭な意志力と機転は圧巻の一言です。やはり人生において大事なのは、折れない精神と頑丈な肉体、そして運だと思い知らされる。五郎治自体のキャラクターと数奇な運命があまりにも面白いというのはありつつ、やはりすごいのはこれを小説として落とし込んだ吉村先生の作家力。余計な装飾はせず、かつ冗長な説明は避け、淡々としつつも極上のエンターテイメントとして成立させている2025/05/09
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