内容説明
鎖国令下、ロシア艦が蝦夷地に来襲。五郎治と左兵衛は、オホーツクへ連れ去られた。極寒の地で待ち受けていたのは、貧困と差別、そして言葉と文化の大きな壁であった。日本へ帰るため逃亡をくわだてるが、いまや故郷は遠い。容赦ない寒気と苦難の旅路が始まった 。大スケールの傑作歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読特
43
エトロフ島に来襲したロシア艦。番人左兵衛とともにオホーツクに連れ去られた番人小頭五郎治。その後の運命は? 544ページあるが、ページあたり33文字14行という大きな文字。展開も早く、飽きさせない。ハラハラドキドキ。ぐんぐんページは進む。児童向けでも十分読まれそう。 択捉島の老門、紗那、内保。樺太の大泊、九春古丹。シベリアのオホーツク、ウラク川、ウリヤ川。セ゚ンタリン諸島。北の方の歴史・地名も詳しくならねば。2019/12/30
kawa
36
江戸の末、蝦夷地でロシア船に拉致された五郎治と左兵衛の苦闘の物語(「文化露寇事件/ぶんかろこうじけん」)。ロシアは日本との交易に利用したいがために二人の帰国を認めず、日本語教師としてリクルートを狙う。望郷の念やまない二人が取った行動は…厳寒シベリア逃避行。吉村マナーの圧倒的ロードムービー、読み手を大渦に巻き込みつつ下巻へ。2023/01/05
James Hayashi
31
記録文学。1807年、択捉島の漁村がロシア艦に襲われ、無力のうちに奪われる。五郎治と左兵衞は運悪くシベリアに連れ去られるが、転んでもただでは起きない。ロシア語の習得に努める。年の半分以上を雪に閉ざされたオホーツクというシベリアで幽閉さるが、努力の甲斐があり日本語の指導者になることを薦められる。それはキリシタンになる事であり、鎖国のため帰国は叶わなくなる。2人は逃亡を試みるが日本への道は険しく果てしない。出だしは「間宮林蔵」と重なり面白味もなく読み辛さを感じたが、半場からはのめり込んだ。下巻へ。2016/04/12
ぼちぼちいこか
28
江戸時代、徳川幕府の政権下、漂流した難波船はロシア領まで行きつく場合があった。ロシアは欧米の列強国に倣って海上進出を果たすがそれを阻む国が日本であった。ロシアに目をつけられた日本は鎖国政策とキリスト教の禁止政策をとっていた。拉致された日本人たちは数奇な運命をたどる。主人公は故郷に帰ることを心の支えに逃亡を企てる。果たして…2021/02/17
まーみーよー
24
物語は文化4年、エトロフ島にロシア艦が来襲する場面から始まる。五郎治と左兵衛はロシア艦に捕らえられ、オホーツクに捕虜として連れ去られる。吉村氏の「間宮林蔵」の冒頭と同事件であるが、林蔵はエトロフ島からロシアの襲撃を経験し、一方で五郎治達は捕らえられたロシア艦側からエトロフ島襲撃を目撃する点が面白い。オホーツクでの毎日は政治的な理由で冷遇され食べるものにも苦労する。同氏の「大黒屋光太夫」「漂流記の魅力」の登場人物とを繋ぐエピソードもあり興味深い。オホーツクからの逃亡は寒さと餓えとの戦いで苛酷すぎる。下巻へ。2020/06/19