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内容説明
明治初期「勉強立身」の言説が高まり、学校の序列化も進むと、青少年の上昇移動への野心は新たな「受験的生活世界」を生み出す。怠惰・快楽を悪徳とし、受験雑誌に煽られて刻苦勉励する受験生の禁欲的生活世界を支えた物語とは何なのか。受験のモダンと、昭和四〇年代以降の受験のポストモダンを解読。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
14
昭和40年台くらいから平成に入って暫く位の時代を受験のポストモダン期として、「マジな競争」から「ゲーム」への変容を説く。その前の時代は、明治から続く刻苦勉励の受験生というモデルの立て方は興味深く、事例も予備校から受験雑誌まで受験的生活世界をよく表現している。文庫のあとがきは2015年に書かれているが、学力ノンエリート層を勉強中流階級に向けて頑張らせた選抜システムは、少子化による受験圧力の大幅な軽減で崩壊したというまとめは明快で、いまや学力上位層だけが加熱され、下位層には冷却が進んでいることも了解できる。2020/12/09
しおり
10
受験と受験生の変遷をみた本。明治に誕生した苦学、がり勉な感じの風潮は戦争でも変わらず受験の大衆化と偏差値が広く導入されたことでやっと変化を見せた。かつて受験は今以上に出世の道として激しく希求されていた。学校教育の普及によりこの価値観が大衆にも開かれた時、苦学は生まれた。受験のポストモダンの話は私の肌感覚にかなり近かった。必死さは避けられ代わりに要領の良さがあるべき受験生の姿だ。努力のみに恃んで入学するとプチブルの悲劇が起こる。GPAが全く重視されない辺り、大学も本音と建前を分かってるな……2021/07/27
Happy Like a Honeybee
9
民衆にとって学校のカリキュラムとは、階層移動と地理的移動センスの伝達と動員化である(マクルーハン) 先進国で受験雑誌は日本独自の文化。 高橋是清は人材選抜試験ではなく、偶然が重なり大臣の地位へ上り詰めた。 学歴を通じての階級の再生産。 ただ学歴が強弱どちらのカードになるかは、分節化された労働市場に依存する。 学歴が強い資本となるのは、教育システムに近い領域に限定される。2019/11/26
うさこ社長
6
★★★★★放送大学大学院で竹内先生の「教育システム論」に感銘を受けた。私のレポートに対する的確かつ詳細なアドバイスにも感激。明治10年代からバブル期までの受験の様相の変容について詳細に記載されている。私の大好きな川端康成の「伊豆の踊子」や、庄司薫の「薫君4部作」などに出てくる受験や学問に関する記載とも重なる点が多い。文庫版あとがきで現代を「学力格差の事実に直面しても、学力や学歴が将来を規定することは少ないと意識すればするほど学力格差の事実に直面してもなんら痛痒を感じない。」と述べており、的確だと思った。2018/12/02
あぁ輔
3
この時点では筆者は「岩波文化」と「講談社文化」を対立した物と考えている点が面白い。ここから今度は旧制高校と教養主義の問題に就いて考えはじめたんだろうな。2017/01/15