内容説明
怨霊や生霊の世界が身近にあった室町時代末期。6代将軍の落胤という熊野の源四郎は「将軍になろう」と、飢饉と戦乱で荒廃しきった京へ上る。都では8代将軍足利義政の御台所、日野富子と、側室の今参りの局が権勢争いに明け暮れていた。その暗闘に巻き込まれた源四郎を、幻術師・唐天子の奇々怪々な幻戯が襲う。
目次
京 へ
花ノ御所
兵 法
唐天子
さわらび
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びす男
75
繁栄、権力、富、女。世間の人々はさまざまなものを追いかける。変わらぬもののない儚い世の中をベースに、面妖な術の数々がたくみに作品を脚色し補完する。そんな世を、主人公はあっちへふらふら、こっちへふらふら。「あなたは魂をさだめて1日でも生きたことがありますか」。最後に投げかけられたそんな問いかけは、下巻への大きな伏線になっているような気がする。忙殺されそうな心身に、この摩訶不思議な世界観が心地よい。2015/11/11
優希
48
面白かったです。司馬史観を通して描かれる幻術小説と言えますね。都での権力争いの暗躍に巻き込まれた源四郎に幻術師の幻戯も更に襲いかかるのが不穏な空気を醸し出しているように思えました。下巻も読みます。2023/02/18
たつや
46
応仁の乱から十数年遡った頽廃期の室町時代がお話の舞台。主人公は源四郎という青年。彼の亡き母は紀州半島の熊野で巫女をしていたが、やがて遊女となる。この熊野には行者の行場とされており、足利義教と関係をもち、生まれたのが源四郎だと教えられていた。母の死をきっかけに、源四郎は「都へ出て将軍になろう」と京を目指して飛び出す源四郎。途中で出会う山伏の腹太夫と行動を共にするが、この腹太夫がいいキャラです。足軽は流行語とか笑える。さらにまた幻術師の男とも出会う。この時代は幻術師というものがいたらしい。続きは下巻へ。ここま2016/11/20
さつき
43
時は室町時代。熊野の巫女だった母から足利将軍の落胤だと聞かされ育った源四郎。母の死をきっかけに都に上ります。印地の大将、腹太夫。将軍御台所日野富子。将軍側室今参りの局。幻術師の指阿弥陀仏、唐天子。様々な人物が織りなす物語に心奪われます。歴史小説というより伝奇小説。源四郎と共にあやかしやめくらましに誑かされ、幻惑されました。魑魅魍魎がうごめく都で源四郎がどう生きるのか、下巻も楽しみです。2016/09/11
カムイ
38
初めて読んだ司馬氏の作品です。下巻では感想を。2021/07/22