内容説明
「野蛮の勃興こそ歴史の跳躍台である」。文明が衰退した明とそれに挑戦する女真との間に激しい攻防戦が始まった。世界史を切り開く動乱に翻弄される韃靼公主アビアと平戸武士桂庄助を中心として、様々な人間が織りなす壮大な歴史ロマン。第十五回大佛次郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
101
世界史が語られていく中での激しい動乱を見ることができたと思います。王朝の変遷のうねりと共に描かれる人間ドラマ。ロマンスはいつしか重厚感あふれる物語へと変遷している。鎖国のために帰国できなくなった庄助と、彼を取り巻く人間模様、そして歴史が彩る世界。それは時代に翻弄された庄助とアビアの運命の物語でもあったのですね。架空の人物が主人公とはいえ、歴史小説としての重みは読み応えがあります。韃靼が遠い国になったときの想いはどんなだったのでしょうね。2017/07/21
レアル
67
この作品を普通に読めばライトな冒険譚なのに、じっくり読むとどうしてこうも重厚感溢れる作品となるのか!読み方によってその味わいが変わってくるのが面白い。そして物語の中以外でもこの地への著者の愛もヒシヒシと伝えられているようにも思える。朝鮮や中国の時代の移り変わりだけでなく、日本の政策に翻弄された庄助。そしてアビアの運命。良い作品だった。2017/02/16
キムチ27
60
流せない記述が多く、読むのに骨が折れた・・面白すぎて。作家あまたあれど、ある意味、筆者の様な個性を持った方は不世出かも。更に、絶筆というからエンディングも何かしら味わいがある。あとがきに変えての「女真人、来たり去る」なぞ、エッセーとして秀逸。「騎馬民族という世界は英雄が出ないと≪縫い糸を取った着物≫とは言い得て妙。庄助もアビアの筆者が作った架空の人物なれど、ラストでは独り歩きしている感じ。滅満興漢の激しさを語る箇所は興味深々、単一民族と称する日本では想像だにできぬ世界。これも含め、教養になる読書だった。 2018/05/06
金吾
59
○やはり面白かったです。清の勃興がよく伝わってきます。主人公は数奇な運命をたどった架空の人物ですが、ロマンと逡巡もあり良かったです。ラストは少しジーンとしました。2022/03/14
たつや
57
司馬さんの最後の小説だったんですね下巻で気づきました。子供の頃から「だったん」という言葉が好きだったという司馬さん。本作には色々な思いがつまっているのかな?と思います。モンゴルまでアビアを送り届けた庄助が、日本に帰ろうとすると日本は鎖国をしてしまい、戻れない。こんなドラマティックな話し、よく思い付いたなと驚きました。上下巻2冊でなく、5~6冊くらいにしてもよかったように思う。テレビドラマワンクール分くらい。でも、情景描写や、歴史的事実の方が多いと思えた。最後の最後まで司馬さんらしいと思える作品でした。あと2016/11/20