内容説明
マルクスが嫉妬し、社会主義・無政府主義に決定的影響を与えた伝説の書にして、混迷の21世紀への予言の書。待望の本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
29
フランスの河上肇のような感じ。貧困の直接的原因は収入の不十分さ。不運や悪意でないばあいでも不十分か探るべき(45頁)。金持ちにむかって、貧乏人より良い生活ができるのは計算まちがいと説得するのはむずかしい。貧乏人にも誠実な金持ちを想像できない(55頁)。政治経済学とは、富の生産と分配現象。真正な労働と交換形態の観察の集成(63頁)。重要なことは、経済の事実と慣習の研究をおこない、意味をつかみ、哲学の域にまで高めること(156頁)。権力がもちいるお金は、納税者からまきあげたもの(255頁)。2015/02/05
cockroach's garten
25
19世紀においての経済構造から矛盾(アンチノミー)を浮き彫りにさせることによってそれを分析、追求し、解消させるという弁証法で論じられる。題名の通り貧困という存在が主題となって価値、分業、機会、競争、独占、税または警察(公務員)所謂経済発展の五段階とプロローグで”私は神を仮定する”との言葉で始まった人間と神の問題が出てくる。社会主義者にも経済学者(保守派)にも刃を向けるプルードンは狂犬のように見える。しかし、どの批判も彼の導き出した矛盾へ向けてのものだ。(コメントに続きます)2017/04/16
古川
3
基本的には、資本主義を利点であるテーゼと欠点であるアンチテーゼに分解して、そのアンチノミーを止揚することが大事だとして、資本主義を全肯定する経済学者と全否定する社会主義者の両方を殴るという主旨の本だが、日本語訳上下巻で実に1000ページ超に及ぶこの膨大な著作の中でプルードンは神の存在論から価値論から人口論や自由貿易論や道徳論や所有論や、とにかくいろんなことに言及しているために、全体的にはとりとめのない印象で、批判者たるマルクスの触れれば切れそうな鋭角的論調とは好対照をなしている。2017/08/19
鏡裕之
1
コレージュ・ド・フランスで教鞭をとるデュノワイエ氏を、ひたすらdisりまくる、の巻。著者のプルードンは情熱的な人だったのだろうが、正直、会って話をしたいってタイプじゃないね。タイトルは『貧困の哲学』だが、他人に対する文句は富裕。2014/12/15