内容説明
「この銭、貰うた」。逃げた父の代わりに金を稼がねばならなくなった万吉は、身体を張った“どつかれ屋”として身を起こす。やがて生来の勘とど根性と愛嬌を元手に、堂島の米相場破りを成功させ、度胸一の極道屋・明石屋万吉として知らぬ者のない存在となった。そんな万吉に大坂町奉行から密かな依頼がくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
55
父の出奔により、家族を支えるために、極道、渡世人、遊び人と呼ばれる士農工商からは外れた身分のなかに自らの身を投じた万吉。その万吉が成り上がっていくことで、出会ってしまう一柳藩との折衝。その内容とは?大坂版新撰組を作った男「明石屋万吉」の生涯を追う。テンポ良く読めて中味もなかなか。★★★★☆2016/10/19
TakaUP48
50
お庭番の父が蓄電し11歳の万吉は母妹の面倒をみるため無宿人に。子ども博打の銭の山にしがみつき、幾度殴られても金を離さぬ「どつかれ屋」となる。依頼された堂島の米相場叩きつぶしでは、黒幕を言えと蝦責めの超拷問に耐え15歳にして家と3千人の子分持ち。侍になり小藩を救って欲しいとの頼み事も引き受ける。人を斬らず、攻めに超人的に耐える。自分のためより、困った人や弱い人のために体を賭ける。幕末のゴタゴタに利用されても憎まず。一目惚れの小春を嫁に、人を食う怖いものなしの小林佐兵衞の物語。俄=即興喜劇はメチャ面白い!2020/05/14
優希
42
根性ありすぎです。身体を張って身を起こすのが凄いなと。やがて生来の根性と愛嬌で動いていくのですね。度胸一の極道屋・明石万吉と言えば知らない人がいないほどの成り上がり具合に驚かされます。下巻も読みます。2022/05/01
kawa
42
遊侠一匹、幕末の快男児・明石家万吉(小林佐兵衛)の一代記。どの部分がノンフィクション?フィクション?首を捻るストーリー展開の中で司馬流歴史エンタメを堪能。新聞小説を文庫本化の上下巻800頁で取りあえず上巻読了なのだが、厚さを気にせずすき間時間でチョコチョコ読める読み易さ。しかも、読み手の集中力を切らさない手練の技に感服。流行作家の真骨頂がこの作品にあるかも…。ジャンルは異なるが「氷点」などの新聞小説で時代を風靡した三浦綾子さんの作品群を思い出す。2019/06/17
Taka
40
司馬作品は秀逸だなぁ。表紙絵から江戸中期くらいの任侠モノかと思ったけどだいぶ違い、舞台は幕末の話だった。中身は任侠モノそのもの。司馬作品の中でもこれは読んだ事なかったので新発見、得した気分。2019/04/28