内容説明
満州事変、第一次上海事変の余韻さめやらぬ昭和八年、聯合通信支局長に就任した著者はが、抗日テロ、西安事件、蘆溝橋事件、そして日中全面戦争へと至る六年間、上海を舞台に取材報道にあたりながら、内外に築いた深い人脈を活かし和平実現に尽力した歴史的証言。日本エッセイストクラブ賞受賞作。
感想・レビュー
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BLACK無糖好き
5
こういう本が歴史の彼方に埋もれる事なく、戦後70年の節目の年に新たに刊行された事は一定の評価が与えられると思う。中央公論新社には敬意を表したい。一方で、著者が日中戦争拡大時の和平工作のさなか、日本軍撤兵の条件として満州国の承認を中国側に求める件は、「日本人は、隣国人の気持ちをもっとよく理解して欲しい」という著者のベースとなる主張との乖離を感じざるを得ない。和平に尽力した様子は十分伝わってくるが、見方を変えれば、この回想記もお坊っちゃんエリートの交遊録との印象も否めない。 2015/12/31