内容説明
雨ははれ、月がおぼろにてらす夜―中国の小説や日本の古典を自在に翻案し、技巧の粋をつくした上田秋成による怪異奇談集の傑作を、円城塔による精緻で流麗な現代語訳でおくる。崇徳院の霊に西行法師が出遭う「白峯」、義兄弟を信じて待つ「菊花の約」、七年を経て妻の元に帰る「浅茅が宿」他、全九編。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972年、札幌市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞を受賞してデビュー。『烏有此譚』で第32回野間文芸新人賞、「道化師の蝶」で第146回芥川賞、『屍者の帝国』(伊藤計劃と共著)で第31回日本SF大賞特別賞、『Self‐Reference ENGINE』でフィリップ・K・ディック記念賞特別賞、『文字渦』で第43回川端康成文学賞(表題作に)、第39回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
160
序文が「文字渦」っぽくてゾクゾクする。その後の9編も生と死が渾然一体となってゾワゾワする。人の思いの強さが空間·時間·常識を飛び越える怪異奇談集。2025/04/11
巨峰
51
SF作家円城塔さんによる現代語訳で怪談小説の古典を堪能しました。全9編。どんなに妖が人を慕ったとしても、共に生涯を過ごすことができないという、基本軸がしっかりしている。個人的には、歴史上の著名な武将の姿が垣間見られるのが嬉しかったです。それから、貴志さんの小説でおなじみの磯良が出てきてテンションが上がります。ポテンシャル的に貞子・伽耶子以上のキャラではないかと。(最後のは徳川幕府への慮りでしょうか…)2024/12/18
ちえ
36
以前から読みたいと思っていた雨月物語。店頭で美しい表紙にも惹かれて購入。最後の「貧福論」以外は怪異奇談。円城塔訳はとても読みやすい。最後の訳者あとがきや解説も詳しく、雨月物語の成り立ちもよく分かった。解説は石川淳訳と比べているが、円地文子訳があると後で知りそちらも読んでみたい。2024/11/23
geshi
30
いつかは読みたいと思いつつ古典のハードルがなかなか越えられなかった『雨月物語』の円城塔による現代語訳というだけで買い。元の文のリズムを大切にしながら、現代でも読みやすいようなバランス。紡がれる怪異譚はホラーではなく描かれているのは人間の情念や業。『白峰』冒頭の流れるような文章は原文を読みたくなった。崇徳院の怨念をこれでもかと書き記してるな。『浅茅が原』夫をどこまでも待つ妻の一途さが悲しい。現代の目で見ると勝四郎クソ夫すぎんか。『吉備津の釜』9編のなかで一番怖い女の嫉妬のホラー。モノで語る落ちは好み。2025/03/31
イシカミハサミ
22
江戸後期の傑作「雨月物語」を 円城塔さんの現代語訳で読む。 円城さんの著作は読んだことがないのだけれど、 表紙のイメージから特徴的な文体を想像していた。 けれど、この本では 原作の雰囲気に忠実に、 現代の人にもわかりやすい補助線を入れつつ とても丁寧に書かれていた印象。 河出文庫の同シリーズで 古典の名著がいろいろ出ているようなので、 気が向いたときに別の本も手に取ってみたい。2024/12/15
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