内容説明
秀吉は、信長を葬り去り、お市の方を引きとった勝家を倒し、天下をとる。お市の方の忘れ形見・ちゃちゃ姫と交わるべく、男女の秘戯を見せつける。老醜の権カ者は、肉欲・殺戮・大増税・遠征などあらんかぎりの欲望をさらけだした――英雄の嘘と虚構性をあばき、正史の裏側から秀吉を描いた渾身の傑作長編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
15
「妖説」というより、これはもう「小説」と言ってしまっていいくらい、いつもの作品より、随分と妖しさを排除した文章と登場人物だ。曠野で始まり曠野で終わる。最初の曠野は他人が荒らした後だが、最後の曠野は自らが招いたものか。夢の中に登場するので判然としない。最初は予想もしなかった人物が最後に天下を取る所。川のほとりで考える、まだ天下とは無縁の劉備から始まり孔明自らが戦った、広々とした五丈原で終わる吉川英治が書いた『三国志』。今まで考えた事がなかったが、本書は、始まり方と終わり方が吉川版『三国志』に非常に似ている。2006/03/04
ポルコ
14
アンチ秀吉を描きつつ、所々で秀吉への愛を感じる。山田風太郎らしい、石川五右衛門の忍術話やら、エロ描写やら、実在の有名人たちの多彩なエピソードやらで、ボリュームたっぷりの名作小説だった。2017/04/18
かずお
10
★★★★☆ 面白かったし、晩年の秀吉の迷走が納得感あった。精神も老化するのだなぁとしみじみ思う。 人間としての全てをさらけ出した秀吉に羨ましさを感じつつ、自分はどうやっても取り繕ってしまうんだろうな。そこに秀吉の人間としてのスケールの大きさを感じた。2016/12/10
ユウユウ
7
晩年の秀吉の痛々しい感じがよく描かれていると思う。
daimonn
7
本能寺の変も秀吉による画策ー正直もっとばかげた小説だと思っていた。奇想天外な視点でもって無理やり史実にこじつけるような…いやひょっとするとまさにその通りの物語なのかも知れないけど、たとえそうであったとしても、これはこれですごい説得力があった!特に晩年の悪政ぶりを考えると、こういう秀吉像もあながちフィクションとも言えない気も…なんて思うのは歴史に疎いせいでしょう。吉川太閤記が個人的にはややうす味気味だったのに対し、こちらは逆に超濃厚。事細かに描かれた秀吉の外道ぶり凄まじいものがあったが、面白かった!2015/08/01