内容説明
周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
151
本書を読むまでは、あまり知らなかった大村益次郎の話。オランダおイネの存在も目新しい。 蘭学・近代兵制など、江戸時代の日本で着眼した先見性はあったとは思う。歴史を長州藩側から見ると、西郷はやはり日本を乱す者だったのだろう。2010/07/31
とん大西
140
読んできた本の中で一番多いのが司馬作品ですが、幕末モノは苦手でちょい敬遠気味です。が、そこはやはり司馬遼太郎。主人公・村田蔵六という鮮やかなフィルターを通して描かれる「幕末」という現象、混沌。その言葉一つ一つが地肌に沁みてくる心地よさがたまらない(司馬作品のレビュー書くといつもこんな感じになるが😅)。一介の町医者に過ぎなかった蔵六。蘭学の才を請われるまま宇和島で蒸気船を作り、幕府講武所で教鞭をとり、ついには長州へ。時は幕末。政情不穏で世情不安。蔵六、請われたのは時代からか。さぁ胎動、維新回天の表舞台へ。2021/03/14
三代目 びあだいまおう
121
後の大村益次郎、今は村田蔵六、彼がいなければ幕末明治維新への展開は成功しなかったとさえ評される人物。知らない(恥) また司馬御大が歴史上に新たな英雄を蘇らせるのかと興味深い❗まだ上巻、何も見えない。彼は医学を学び蘭学を学び、決して多くを語らず、いやむしろ会話がない!「お暑うございますね」の挨拶に「夏はそんなものです」と無愛想にしか返せない!口数だけの問題なら「そうですね」の方が文字数少ないじゃん!無駄なことをしない、でも頼まれることはきっちりやる。まだ見えない❗この先どうなるか、ホントに英雄❓🙇2018/10/17
やっちゃん
109
上巻にしてはテンポよく進んでいる。司馬遼太郎も読み続けると他の作品とリンクする部分が多くて楽しい。脳内で諭吉がお札の顔でしゃべるのも楽しい。やはり幕末はいい、熱量が違うわ。2024/01/19
優希
109
後の大村益次郎となる村田蔵六の生涯を描く作品になります。緒方洪庵の適塾で蘭学を学んでいた蔵六が才能を買われたのは、時代の求めるものを持っていたからでしょうね。歴史の激流に飲み込まれるように、蘭学の道をのめり込んで歩んでいくことになるのは、ある意味宿命のように思えました。一体その運命はどのような方向へと導かれるのか、続きも読みます。2018/11/17