内容説明
宮城県仙台市から青森県青森市まで。雄大なリアス式海岸に沿って走る国道45号線は「命の道」と呼ばれている。あの日、3月11日に襲った津波により国道は壊滅状態に。この道を開かなければ救助も救援もできない。度重なる余震。あるいは自らの命を失うかもしれない。けれど「やるしかねえよな」――。道路の復旧にかけた人々の高き矜持を描くノンフィクション。『命をつないだ道』改題。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
112
「これはもう仕事ではねえ、人としてやんなきゃなんねえことなんだ」これにつきる。被災者である地元の建設業者が瓦礫撤去を行い、その横を同じく被災者が物資を運び、自分の車を泥だらけにして避難者を運び、遺体を運ぶ。そして東北地方整備局局長徳山日出男の「うちを闇屋の親父だと思って何でも言って欲しい」とのメッセージ。支える人があってこそ、あの海外から合成写真ではないかと驚かれた素早い道路復旧の偉業となった。一方で怒りを市の職員にぶつける被災者の記述。受ける職員も、家族を亡くした者は運転が乱暴だったという。痛ましい。2018/03/20
佐島楓
44
東日本大震災時、道路復旧の作業にあたってくださった方々の物語。読み始めると、すぐにあの日に記憶が引き戻された。混乱しきった人々、押し寄せる地震と津波の中、ここまで責任感を持って工事を行ってくださった方々がいなければ、流通網は復活しなかった。単なる美談ではなく、ひとりの人間としてあなたならどうしますか、と問いかけられているようで考え込んでしまった。まだそれほど遠くなっていない日々。忘却を防ぐひとつの大事な手段として、ご一読をおすすめします。2015/01/03
to boy
34
三陸沖を縦につなぐ命の道45号線。津波の後、救援にも物資補給にもとにかく道路が通れなくては何もできない。それを知っている国交省の地方の役人、地域の土建屋などがマニュアルにない事態にどうやって対処していったのかという素晴らしい記録。人間としてやるしかないという瀬戸際まで追い詰められながら立派に道路を確保した姿に感動しました。2016/04/22
hatayan
20
「みんなに必要とされているときに、俺らがやらないでどうするのか。」孤立した集落まで車が通れるように、燃料切れや津波の危険を顧みずに終夜重機を動かして道路を切り開いた建設会社の社員、現場の判断で道路を作ってしまった地元の住人。未曽有の災害を前にしても「想定外」とは言わず普段の仕事の延長で役割を全うしようとした道路管理者。 被災地の道路がスムーズに復旧できたのは、携わる人の職務への使命感、地域への愛着が噛み合ったからこそでした。 津波の映像に驚いていたあのとき、現地で起きていたことを知ることができる一冊です。2018/10/09
RED FOX
14
タイトル通りのドキュメント。どうして次々と襲いかかる事件の絶望感の中で彼らは最高の判断を常に続けて道を作り、人を助けられたのか?三陸の名もなき公務員、民間人達が職務権限を超え、智恵と体力と勇気を振り絞って、津波に呑まれた道路を復旧させようとする。熱い!もうこれ書いててもまた泣ける。2015/10/28