地に呪われたる者

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地に呪われたる者

  • ISBN:9784622079682

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内容説明

民族とは、国家とは、文化とは。
植民地主義に抗し生涯を捧げた著者のメッセージ。
ポストコロニアル批評の原点。

1 暴力
2 自然発生の偉大と弱点
3 民族意識の悲運
4 民族文化について
5 植民地戦争と精神障害

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まると

19
サルトルによる序文と暴力にまつわる最初の章が少々難解で、ペースをつかむのに時間がかかったが、何とか読了。十分に理解できたかどうかは疑わしいが、魂から発せられる力強い言葉が間違いなく心にズドンと響いてきた。欧州諸国による植民地主義への激しい憤りや批判にとどまらず、アフリカを取り巻く厳しい現実に対する怜悧な分析と、闘いの勝利を確信する、預言者のように熱く、扇動的な美しい言葉(これはもしや口述なのでは)が、ほとばしるように羅列される。約60年前の著作だが、現代の民族問題にも多くの示唆を与えてくれていると感じた。2020/12/22

柳瀬敬二

11
FLNの一員として精力的に活動しつつも、独立目前に病死したファノンの思想をまとめた一冊。サルトルの序文と後にプルーストを翻訳する鈴木道彦氏の解説もついている。アルジェリア独立戦争は単なる闘争ではなく、アルジェリア人達の精神的な解放を伴うものであったという。この時代は、まだヨーロッパ対アフリカ、コロンvsアルジェリア人という二元論的対立構造で世界を捉えることができた。アフリカ人はロボトミー手術を受けたヨーロッパ人と同質である等というトンデモ学説はもはや存在しなくなったが、世界は複雑さを増したように思える。2017/02/05

やまやま

8
暴力論のケーススタディが多く続く。理不尽さと強制とをどう捉えるか、というかなり明確な視点を感じるが、一方で複雑骨折とも思える価値観は、訳者あとがきでも引用されているように、大きな理解者であるサルトルに対して自分と同じように生き急げとせかす逸話でも感じられよう。暴力とは自分に対してはふるいようのない事柄であり、他者からの行為であることはよく認識したうえで、「自分」を含む社会がなぜ暴力を発生するのか、解放運動を訴え続ける中で矛盾を感じていたように思えた。何が悪いのか、悩みを同感できるだろうか。2020/08/09

PukaPuka

8
フランスの植民地支配と民族問題の複雑さについて書かれている。フランスはアラブ人を差別し続けてきたし、アルジェリアで凄まじい弾圧、人権侵害をやってきた。差別的な精神医学理論が、科学的な身をまとった上で存在した。著者は精神科医でもあり、植民地戦争と精神障害についての章は、今までこのような記述は読んだことがなく、目から鱗であった。トラウマ精神医学はPTSD概念の成立過程からアメリカの十八番のように思っていたが、それはあまりに単純過ぎる理解であるとわかった。2016/07/22

モッチー

4
フランスの植民地であったアルジェリアの独立戦争において、FLNの強力なイデオローグとして活躍したフランツ・ファノンの論考集。原著が出版された1961年は、前年がいわゆる「アフリカの年」、翌年がアルジェリア独立の年にあたる。本書では、植民地主義、人種差別、民族文化、そして非植民地化に必然的に伴う暴力といった主題に関する彼の思想が、時に過激に、時に冷徹な言葉で語られる。2021/02/28

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