内容説明
1995年1月17日未明、神戸を未曾有の大震災が襲った。一瞬にして崩壊した街で、私立探偵の有希(ゆうき)真一は多くの死を目の当たりにする。ようやく彼が救出した友人の占い師探偵・雪御所(ゆきのごしょ)圭子も精神に異常を……。そんな最中、バラバラ死体の消失、磔(はりつけ)殺人と、連続猟奇殺人事件が発生する! 著者自らの体験も色濃い渾身の筆致で、ミステリー界が驚愕した鮎川賞受賞作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
68
第8回鮎川哲也賞受賞のデビュー作品。阪神大震災の描写そのものが生々しく、決して忘れてはならない出来事であると、思い出させてくれる傑作です。未曾有の惨劇、被災者の声、救援の実情など、目を覆いたくなる臨場感が在る。剰りにも多くの人々が亡くなる、その影で連続殺人は起こっていた。主人公有希と探偵役雪御所圭子は、自らも震災により心に傷を負いながらも、事件の謎に立ち向かう。震災が起きたからこその謎である事は、考え抜かれた構成です。様々な考え方が在るとは思いますが、この様な形で震災を感じる事は大いに意味在る事だと思う。2018/01/30
Yuki
37
集中して読んだ。時系列に沿って主要な登場人物の過去から現在が語られ、震災の「そのとき」にそれらの糸が交わる。震災小説として描写が生々しく、その中で殺人事件による数人の死について考えることについて探偵・有希真一が煩悶するところはミステリの本質をついていたように思う。ミステリとしてご都合を感じるところも多少ありながら、島荘的で派手な謎は面白かった。また有希が割と無神経で首をかしげるところもあったが、彼もまた災害で傷つき失いながらも立ち直ろうとする者なのだと思うと、その人間臭さがこの物語には必要だと思った。2019/01/11
神太郎
30
阪神淡路大震災という未曾有の大震災。そのなかで起こる連続猟奇殺人。読んでいて、震災の様子の詳細さに圧倒される。ミステリーではあるものの、中身は震災小説でもある。「当たり前」「日常」がもろく崩れ去る瞬間。3.11を経験した手前、ふとあの日の記憶ともだぶる。ただ、このときは今よりも免震やら何やらがない時代。その光景はなんとも言えぬものであったろう。猟奇殺人の解決をするというミステリー要素もあるにはあるのだが、どちらかというとそれはおまけのような気もした。2022/10/09
coco夏ko10角
27
第8回鮎川哲也賞受賞。阪神淡路大震災を扱った本格ミステリ。著者が神戸出身で実際に体験したらしく、地震の瞬間やそれ以降のシーンが生々しくてすごい。特にステーキ店での出来事は苦しくなった。 この本は「密室ミステリの迷宮」で紹介されていて興味を持って手に。どの密室も犯人も気になりその点ワクワクしながら読み進めた。震災ならではのトリックを堪能。2014/07/30
hanchyan@ふむ……いちりある
23
著者お初。とても面白かったが、読了に時間かかったってことは同時にしんどかっんだろうなあ読むのが多分。けどコツコツと誠実に積み重ねられるはなしは「Ⅲ それから」で一気に普段の(ミステリ読んでる)ペースに戻る。真っ先に想起されたのは“大量死とミステリ”だなあ、やっぱ。「哲学者の密室」そのものより直截に“特権的な死”について判ったような気がしたぞ(笑)。本格メソッドは、このまえの震災のとき「こんなこともあるかも」なんて漠然と想像してたような真相で、それを小説として読める幸せ、その“健やかさ”がありがたかった。2014/07/29