出版社内容情報
史上初の3刷となったSFマガジン百合特集掲載作の他、陸秋槎、小川一水らの書き下ろし短篇を収録する世界初のアンソロジー誕生
内容説明
百合―女性間の関係性を扱った創作ジャンル。創刊以来初の3刷となったSFマガジン百合特集の宮澤伊織・森田季節・草野原々・伴名練・今井哲也による掲載作に加え、“ソ連百合”として話題の南木義隆「月と怪物」、新鋭女性作家の共作「海の双翼」、『元年春之祭』の陸秋槎が挑む言語SF「色のない緑」、そして『天冥の標』を完結させた小川一水が描く新作宇宙SFの全9作を収める、世界初の百合SFアンソロジー。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
181
タイトルの通り、「百合(女性通しの恋愛)」をテーマにしたSFを集めたアンソロジー。とはいっても著者は日本人ばかりだし、Webで作品を発表しているような最近の世代の人の作品が多い。その意味で、ある意味ではすでに「大御所」といっても過言ではないラストの小川一水の作品はやっぱりちょっと一味違うなというか、エンタメだなぁという感じ。あとは<ソ連百合>として話題になったらしい『月と怪物』も良作だった。あと一編だけ入っていたマンガ作品『ピロウトーク』も短いながら、余韻があってよい。2019/09/23
芳樹
84
9編の短編からなる百合SFアンソロジー。これは良い。尊みがすごい。それぞれ違う百合のあり方。いずれも名作ですが、個人的には森田季節氏の「四十九日恋文」に打ち抜かれました。2019/07/15
buchipanda3
72
百合をモチーフにしたSF集。陸さんのは言語学を題材にした近未来の話。完全なるAIは実現しないことの証明が社会の仕組みでが消失する皮肉とブラックボックスに包まれていく世界の悲哀が印象深い。以前、小説自動創作が話題になったが、もし意味不明な文章がミスなのか難解な比喩なのか判別できない場合どうなのだろうとふと思った。草野さん、身悶えしそうなほどの独占欲が物理学に変換。最後は究極の形へ。伴名さん、不穏さと儚さと血で紡がれる世界がいい。南木さん、舞台設定に妙味。小川さん、何と宇宙漁師。粒揃いの作品ばかりで楽しめた。2019/06/23
なっぱaaua
70
百合×SFといいながら、SFアンソロジーとして面白かった。SFMの作品は既読ですが、改めて。「キミノ~」相手が出てこない百合に吃驚。宮澤さんのこういう作風もいいですね。「四十九日~」切ない。こういうの初めて。「ピロウ~」最終頁が尊い。「幽世~」The原々だ。「彼岸花」このやり取りが美しすぎ。「月と~」ソ連百合ってなんだと思ったけど美しい。「海の~」種を超えた多様性だ。「色の~」とっても知的。中国SF恰好良い。「ツイン~」最後にこれ。正しく楽しいではないか。どれもこれも傑作。SFアンソロジーとしては最高。2019/07/10
ゆかーん
67
思ったより百合な感じではなかったけど、それぞれ作家さんの個性あふれる作品を堪能できました。一番良かったのは、『月と怪物』というソ連百合。ソ連ではタブーとされる同性愛と社会主義の二重の柵が、少女たちを苦しめる描写に、ノンフィクションを見ているかのようでした。また、『色のない緑』も面白かった!AIによる翻訳は人間を超越するかのか?数学のような答えが1つではない複雑な言葉の組み合わせを、人工知能はどこまで理解できるのかを問う物語。ルール化された言葉の羅列が、表現の自由を奪いかねない、危険な世界に恐怖しました。2019/10/07