内容説明
「この歳になっても、肉は食べるし、お酒は飲む。徹夜で原稿も書く」瀬戸内寂聴さんと、「どうしてもっと早く日本国籍を取ることを考えなかったのか」というドナルド・キーンさんの対談集です。ともに九十歳を迎える(当時)二人が、今日までの出来事を顧みながら、まずは3・11東日本大震災の被災地に足を運んで感じることが出来た日本人の底力、そして残された人たちの生きる意味について話し合います。対談は3年前の2012年に行われましたが、復興が遅々としている2015年の現在に読んでも、胸に突き刺さる発言がたくさんあります。さらに平泉・中尊寺に見られる日本の美、一方で失なわれてゆく美しい風景や日本人らしい心、『源氏物語』『おくのほそ道』など古典文学の素晴らしさ、太平洋戦争・ソ連崩壊など二人が選ぶ人生の三大事件、さらに自らの老いと死について縦横に語り合います。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つねじろう
37
いやあこの90歳タッグは強力。日本の美に魅せられそれを紡ぎ出す日本人をリスペクトし日本人になったキーン氏。その日本の美の象徴だとキーン氏が語る中尊寺で得度を受けた寂聴さんとの対談。東北に縁が深い二人が語る震災の話は涙が止まらなくる。90を越えてなお生を楽しむ力、人に役立つことは何かと模索するエネルギー。まだまだやりたい事は沢山有る。求められてる以上目の前の仕事を一所懸命やると言う。ね、こんな素敵な90歳には憧れるよね。この二人の生き方を追うだけで命の在るありがたさ、生きる事の大切さを本当に学べる気がした。2015/04/25
双海(ふたみ)
31
キーンさんって崩し字も勉強していたんだ。崩し字を習得すれば読める書物の幅が圧倒的に広がりますものね。2015/02/26
佐島楓
30
私たちは、信じるに足る日本をつくっていかなければならない。そう、心から思いました。2015/04/04
nao1
18
キーンさん談「人はなんのために生きるのか ~ 略 ~美のためです~ 略 ~美しい言葉を使い、歌の言葉を引用するのも、自分の知識をひけらかすためではなく、自分の言葉を美しくするためなのです。着るものも行動も、すべて美のため。」正岡子規も、美のために生きたというので、きっと同じ感性のことを言ってるんだろう。日本文学の根底は、上代から脈々と続く「美」だろうなと思いました。本書は簡単な対談だけど、足利義政の東山文化の深い話もキーンさんに詳しく聞きたいというか・・・本が出てるから読めばいいんだけどね。2016/03/13
to boy
18
対談集ってあまり好きではないのですが、これはとてもよかった。キーンさんと寂聴さん、ともに90歳で東北に深い思いを持ち続ける二人が大震災後の日本を語る。読んでいて涙がこぼれて来ます。キーンさんの日本への帰化はもっと前から決めていたことだそうで、初めて知りました2015/03/07