内容説明
惜しまれながら逝った著者の傑作中篇集
若くして成功した画家・宇佐美の描いた肖像画が、切り裂かれたうえ硫酸をかけられた。犯人は「これは予行演習だ」と告げるが??
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
210
あああ、イオリン、カッコええなぁ。なんつーかこう、昭和のオトコなんよね。酒、仕事、芸術、そしてそんな中に見え隠れする女性の存在。つくづく、頭のいい(仕事のデキる)オトコはかっこいい。イオリンの未読作品、あといくつあるんだろ・・・って思いながら読了。2016/03/31
yoshida
148
藤原伊織さんは初読みの作家さんです。本作は晩年の作品とのこと。淡々とした語り口と静謐な文章。哀しみと諦感が滲み出てくるようです。個人的にはもう少し躍動感のある作品が好みでした。この作品で藤原伊織さんを卒業せずに、もう一冊読んでみたいと思います。書かれた時期により印象も変わることでしょう。2018/01/28
おしゃべりメガネ
146
すっかり'イオリン'モードの勢いがおさまらず、ボリュームは少ないながらもガッチリとした'オトコ'くさいハードボイルド短篇集を堪能させてもらいました。やっぱり藤原さんのえがく'オッサン'は本当に魅力的で、とにかくシブさが際立ってます。頑固といえば頑固なのですが、かといって融通がきかないワケでもなく、生きざまもブレない。そんな'オッサン'達が生き生きとリアルに描写されています。特に男前なルックスではないのかもしれませんが、どの人物も描写されている雰囲気がとてもセクシーで、こんな'オッサン'達に憧れますね。2017/12/24
KAZOO
119
藤原さんの再読もあと数冊を残すだけになりました。この本には短編が3つ収められていますが、私は表題作が印象に残りました。萩原朔太郎の詩やレンブラントの絵、あるいは昔はよくあった貧乏画家の時代など、映画を見ているような気がしました。私はこの作品を読むと最後に涙が出てきてしまうのです。いい作品です。2018/01/15
chimako
94
上品な大人の「ミステリー」……なのでしょうか?謎解きはあるけれどその色合いは決して濃く感じない。肝の座った男たちを描いた短編集。「ダナエ」は既読。結末は分かっているのに読ませる筆力。「実は父娘だった」とか、「知らなかったために関係を持ってしまった」とか使い古された手法が、古さ故に雰囲気を作っている様に感じる。次はハードボイルド 読んでみようかな。2017/08/14