内容説明
祖国中山は自分にとって小さすぎるのか――。楽毅の憂色は濃く、深い。四度にわたる隣国・趙の侵略。宰相だった楽毅の父は自ら望んで死地へ赴き、祖国は国土の大半を失った。趙の侵略はとどまるところを知らず、戦火が絶えない。が、祖国の君臣は方策を講じず、内外で声望の高まる楽毅を疎んじ続けた。苦難の戦いを強いられた楽毅はどこに活路を見出し、いかに理想の自己を貫いたか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
124
4部作の2部作。そろそろ中山国が追い詰められてきた。楽毅や太子の力及ばず、趙にどんどん進行されていく。停戦の約束も反故にされ、楽毅も殺されかける。中山国の王は危機感もなく、未だに楽毅や太子が早く戦死してほしいと思っている。読んでいてやるせない気持ちになる。上がこんな人間だと下は辛い。そして、趙にも不穏が動きが出てきている。嫡子の廃止。次男に継いでほしいという思い。春秋戦国時代は、だめな人間とすごい人間がごちゃまぜに生きている。世の中がひどいから英雄が出てくると思う。続きが気になる作品であった!2021/08/27
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
66
第二巻では、戦国期の中国、祖国中山の存亡をかけた楽毅と隣国趙との智謀をめぐらした戦いが本格的に展開されます。人相見の予言が効いていて、今後どんな運命が待ちかまえているのかドキドキしながら次巻へ。2017/01/04
KAZOO
62
小国の悲哀があって、しかも父は死地を求めて戦場へ。楽毅はどうしようもない君主に冷遇されて、ということで艱難辛苦汝を玉にす、をまさに地で行くような感じがします。ただ宮城谷さんの文章には様々な有名な言葉などや自分の心に響く言葉もあって私は付箋紙をつけているのですが結構いっぱいになります。2015/03/29
キジネコ
44
言葉は思考を生み、文字は記録を残し、漢字は文化の豊穣を今に伝えます。楽毅が衰滅する祖国のために奔る物語の二巻、国は蒙昧の主を失い、土を失い、人を失います。彼楽毅は、何のために戦うのか?と問えば よく生き、よく死ぬため。作家の抒情的な文章が物語の形を駆使して読者の中の混沌を整序に向かわせる鐘を打ちます。法を致して 法に致されず。勇気は、半歩前に出ること。再読の今、読者の心境の有り様を映す鏡の様、自分自身をみる時間を与えてくれる格別の時間、読書の快楽です。2015/02/15
著者の生き様を学ぶ庵さん
33
中山国没落に幾多の要因あれど、内憂外患に瀕するとき、太子・忠臣の謀殺が一大事と思ひつる亡国の王のゐつづけたるが故なり。準備万端たる趙の武霊王に勝つ見込みは、千に一つもなし。楽毅の昔陽攻略に見所はあれど、哀しき敗戦国の将に哀愁あり。時同じくして、燕に父の奸臣を憎みたる昭王あり。郭隗に諫められしも、義心高じ内乱をなむ起こしける。斉は燕の乱れに乗じ、燕は敗れにけり。先王の恥を雪ぐに、王必ず士を致さんと欲せば、「先従隗始」の言あり。「さすれば、隗より賢き者、千里を遠しとせず」。第三巻に賢者は遠方より来たるか。2015/11/02