内容説明
不安定な彼を、少女は救えるか。
誰とも会話せず目も合わせず、ひとりぼっちの男子高校生・向井城介は、時に「突然キレて上級生を殴る」「授業を抜け出しクラスメートの下着を盗む」など数々の常軌を逸した行動に走り、昔から“頭がおかしいやつ”と避けられていた。
なぜ彼はそんな奇行を繰り返すのか?
クラスメートの倉橋美冬は城介に3年前に亡くなった母の姿を重ね合わせ、彼のことを理解しようと懸命に接触を試みる。
人との関わりあいを拒む少年と、亡くなった母を想い続ける少女が交差する、とある数日間の物語。
第6回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作!!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
日奈月 侑子
7
ちょいちょい出てくる挿絵の、何というか…人体のバランスみたいな物に違和感を覚えてしまったりしましたが、それはさておき。 城介は本当に『孤独に戦う人』だなあ…という感想でした。そうだよなあ、普通の人には見えない物と戦う人って、一般の人から見たら気が違ってしまった人扱いされてしまうし、その結果諦めたりしてしまうのも仕方ない事だと思う。最初は苦手でしたが、美冬と会えた事で、希望になったんじゃないだろうか。美冬にとっても。 これしか方法がないとは言え、何か続けてたらその内城介さんがマジで死んでしまいそうだな…。2014/08/05
マギカ鍋
7
他人には見えない人の形をした何かに常に襲われてきた高校生の話。時に体を乗っ取られ彼らの欲望のまま行動させられ誤解されてきた。人知れぬ化物との戦いモノに留まらず周りから見た時の精神不安定さを現実的に描き主人公の孤独感が生々しい。敵の正体はありふれてはいるが後半の難敵の存在理由と戦わなければいけない理由がなんとも皮肉が利いている。主人公を気にかける少女の亡き母の手記は並々ならぬ敵との永遠とも思える戦いの不毛さを説いている。それゆえに結末には多少の孤独の解消はあるものの、それほどの希望を感じる事はできない。2012/07/01
ごぅ。
5
高校生・向井城介は情緒不安定な行動をとり、周囲からつまはじきされるような存在。倉橋美冬は、不慮の事故で亡くなった母親がいる。ある行動から母親の面影を城介に感じ、関わり合いをもとうとする。。一般的な理解と常識的なものの見方、自分自身の見え方と周囲の見方。。面白い対比で心的な描写が意外とのめり込めた。。多分自分が求めてるか足りないところが多い部分なんだと思う。。。2020/08/23
彼方
5
タイトルとはあまり合ってない内容でしたが中々面白かった、普通の人には見えない怪異と日々戦う少年と端から見れば奇怪に見える少年を理解しようとする少女の物語。ボーイミーツガールというよりダブル主人公な感じかな。トビラビトの意義が明かされないのはもやもやしますがこれまでの生活故にひねくれてしまった主人公が成長したシーンは良かったです、それまでの葛藤も境遇が辛いだけに嫌みなく読めました、真のぼっち主人公ですね…。タイトルや挿絵は少し残念ですがヒロインの物語の絡ませ方も良かったし良作、次巻でも次作でも期待してます。2015/03/09
ふじさん
5
第6回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。粗筋から想像していたサイコサスペンス調の物語とは異なっていたものの、これはこれで楽しめた。「ボーイ・ミーツ・ガール」の困難性を描く展開にはメタライトノベル的な意識が窺えるし、表面からは見えない「物語」を斟酌する、その「視点」に言及した内容もメッセージ性充分。少し主人公の事情を明かすのが早いか、とは思いつつ、主題と筋の兼ね合いを考えるならこの形に落ち着かざるを得ないのかも。何となく世界観が安手で、設定的な甘さを感じる部分もないではないが、実にガガガらしい一作だった。2012/08/12