内容説明
信仰を通して命をかけて信念を貫いたガラシャ夫人の生涯を描いた著者初の歴史小説。
細川忠興に嫁いだ、明智光秀の娘・玉子は、光秀が信長を討ったことから逆賊の娘となってしまう。しかし、忠興は玉子を離縁せず、幽閉する。子を死産させてしまった玉子はその身の上を嘆くが、侍女から聞くキリスト教に興味を抱いていく。そして、秀吉のキリスト教禁令発布下、玉子は忠興の許しを得ずに、三男とともに受洗。洗礼名をガラシャとするが……。人間としての自我にめざめていた玉子(後のガラシャ夫人)を通して、女性が人間らしく生きることの意味を問う著者初の歴史小説。
「三浦綾子電子全集」付録として、夫・三浦光世氏による「創作秘話」を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
351
凄い小説!戦国の世の、女というだけで降りかかる理不尽、不自由に悩みながらもやがて信仰というよすがを得、凛とした生涯、凄絶な最期を全うした玉子こと細川ガラシャ。その人生と葛藤を紡ぐに三浦綾子さん以上の適任者はいない。まるでガラシャがその身に宿ったかのごとき臨場感。しかも読みやすい!お家のため、女というだけで降りかかる理不尽、不自由。主君を討った光秀の娘である玉子(後のガラシャ)は山奥に幽閉され、我が人生を考える。佳代と右近の誇らしい程の生き姿勢に心揺るがす下巻。愛と信仰を貫いたガラシャの生涯に、合掌‼️🙇2020/06/10
夜間飛行
227
光秀が追い詰められていく心理がよくわかった。夫婦愛の人だった光秀に主殺しという〝非道〟を背負わせることで、封建的価値観の外から光を当てているように思った。人間が〝非道〟を背負わねばならぬことを人々はどう受け止めたか。細川父子は「苦悩の果てのことであろう」と光秀に同情するが、家大事の立場を棄てない。一方、女性を道具扱いする価値観に悩む玉子は、切支丹の佳代や右近に惹かれて外の光に向かう。秀吉が禁教令を出した直後に受洗しガラシャとなったことから覚悟の深さがわかる。ただ、その余りにも一途な思いには戸惑いも覚えた。2024/11/02
ちょろこ
148
堪能した、一冊。下巻は特に玉子の目線と心情を中心に描かれる戦国の世。道具、捨て駒として扱われるのが当たり前の時代。女性達の諦めとも言える人生の中で、玉子の芯の強さ、凛とした姿は胸をうつ。父母、一族を喪い忠興しか心を頼れる人はいない。なのに「美しい」という言葉しかもらえない侘しさ。ここに涙と共に一番寄り添ってしまった。次第に高まる信仰心。息をのむあの瞬間、玉子の祈りが心に、白無垢と真紅の血がまぶたに焼きつく。彼女の尊い命が動かした幾人もの心に涙と吐息。歴史の一端、一人の女性の生き様、全て堪能した。2020/06/17
aoringo
93
ついにおきた運命の本能寺の変。城から離れ山深くに幽閉される玉子。その間に夫忠興が側室を置いていることを知り傷つき、キリスト教に救いを求める。壮絶な最期まで信仰に生きる姿に鳥肌が立ちました。異常に嫉妬深い忠興の悪いイメージもちょっと変わったかな。「苦難をよろこび、感謝する」なかなかできることではない。三浦綾子さんのガラシャを読めて良かった。2020/03/14
takaC
90
激動する歴史。懊悩する玉子(=伽羅奢)。下巻のこの内容だからこそこの『細川ガラシャ夫人』というタイトルなんですね。とか考えたけど単行本出版時は上下巻ではなかったので当たり前のことか・・・2014/10/27
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