内容説明
血の中を流れる罪を「ゆるす」といってくれる権威あるものをつかんだ陽子。感動の結末!
北海道大学に進学した陽子は、徹の友人・北原や札幌で知り合った順子らと、一見穏やかな日々を過ごすが、不義の子であるという自らの「罪」に悩み苦しむ。そんな陽子の前に、実の弟である達哉が現れる。達哉は異父姉とも知らずに、以後、陽子に近づき、母の秘密をかぎ出していく。そしてついに陽子が実母と顔を合わせる日がやってくる……。
1971年(昭和46年)にテレビドラマ化され話題を呼んだ。
「三浦綾子電子全集」付録として、夫・三浦光世氏による「創作秘話」などを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
117
「罪は、たとえ人間の命をもってしても、根本的につぐない得ないもの。確かに罪とは、ゆるされる以外にどうしようもないものかもしれない。」 罪を犯したことがない人間なんてひとりもいない。生を受け産まれくることこそ罪なのかも知れない。だからこそ大切に生きなければならない。2017/01/29
ナマアタタカイカタタタキキ
113
自ら復讐すな。復讐するは我にあり、我これを報いん。真に裁き得る者だけが、真に赦し得る──『赦し』のためにここまでページが割かれてきたが、テーマだけが一人歩きすることはなく、小説という形式の中へと入念に練り込まれていて見事だった。特に最後の流氷のシーンは、思索的な言葉でそれについて語るよりもずっと鮮明に、読者の心に焼き付くのではないだろうか。それでも、愛とは感情ではなく意志だ、という啓造の言葉の真価には、自分自身の足で辿り着かねば触れられないことは確かだ。その旅路はこの物語よりも遥かに長い道程となるだろう。2021/05/09
のり
109
陽子の潔癖さが、次第に己を苦しめる。産みの親と育ての親。二つの家庭を思い遣り、誰にも本音を語れず…ストレス溜まるだろうなぁ~。異性への想いも揺れ動く。生きるという事は、生易しくはないが、陽子のおかれた立場は苦難過ぎる。結局最後まで夏枝には呆れた。人には冷酷で、余計な事まで口にする。しかも色好みで嫉妬深い。旦那の忍耐力に拍手。(^o^)ラストはようやく光が射し、力んで読んでいたため、未来が開けそうでホッとした。結婚相手は読者の想像任せなのかな?勝手に自己判断しましたけど…2017/04/12
優希
101
大学に進学した陽子が異父弟・達哉と出会うことで複雑な人間関係が白昼にさらされていくようでした。その様子はまさに昼ドラを連想させます。それでいながら色濃い宗教色。キリスト教という背景が物語を人間の愛と赦しというテーマへと結びつけているのだと思います。陽子の目の当たりにした燃える流水の奇跡がイエス・キリストの流された血の象徴であり、それを感じ取れたからこそ救いを得ることができたのでしょう。浮き彫りになった「原罪」を赦せるかをテーマに、読み切らせてくれました。愛と罪と赦しの物語に胸を打たれるばかりです。2015/08/05
Nobu A
99
三浦綾子著書4冊目。「氷点」「続氷点」と続き読了後の何とも言えない余韻を残した充足感。良書の証左。自儘な良枝や狡獪な村井等、個性豊かな登場人物も重厚な物語を構成する上で必要不可欠だったかなと感じる。とりわけ舞台となる大自然豊かな北海道は。キリスト教の「原罪」と「寛恕」を現代社会に見事に組み込み、物語を展開する翹楚な筆致。堕胎だけでなく幼児虐待等、暗いニュースを頻繁に目にする現代、人とはどうあるべきかを考えさせられた。敬虔な宗教信者ではないが、作家の旧・新訳聖書入門書も読みたくなった。分かり易く書いてそう。2025/02/16
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