内容説明
本当の人間の美しさとは、優しさとは何か?著者が真正面から問いかける不朽の名作!
ある夏、北海道旭川市郊外の見本林で3歳の女児が殺される。父親、辻口病院院長の啓造は出張中、母親の夏枝は眼科医の村井の訪問を受けている最中の出来事だった。夏枝と村井の仲に疑いを抱いた啓造は、妻を苦しめたいがために、自殺した犯人の娘を引き取ることにする。事実を知らない夏枝はその娘に陽子と名付け、失った娘の代わりにかわいがる。夏枝や兄の徹らの愛情に包まれて明るく素直な娘に成長していく陽子だったが、いつしか家族に暗い影が忍び寄る―。
三浦綾子の朝日新聞の懸賞小説当選作であり、デビュー作。
そして、1969年(昭和44年)、1970年(昭和45年)、1981年(昭和56年)、2006年(平成18年)と昭和から平成にかけて4度にもわたりテレビドラマ化された、空前の名作である。
「三浦綾子電子全集」付録として、夫・三浦光世氏による「創作秘話」などを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
312
息が声が時間さえも動きを止めた!『待て~!』と叫びたいのに喉も身体も動かない!そんなぁ・・お願い、時間を巻き戻して❗憎しみと復讐、世間体と葛藤、猜疑心と屈辱が綯交ぜとなる危うい砂上の楼閣辻口家。唯一、純真さの結晶たる陽子は自身が貰われ子と知っても、冷たくされても清く強く明るく生き抜くと誓う!純真で脆いけど、優しさと覚悟の美しき化身、陽子の健気さに何の罪があろうか。原罪?わからんでもない!が、今とこれからだろ、大事なのは!過去、しかも自分が生まれる前の罪を?自分を其々登場人物に反映した。我はいかにす⁉️🙇2019/09/07
🅼🆈½ ユニス™
180
“申し分のないように見える家族が一皮むくと卑劣で嫉妬深く醜い” 辻口家を通して、誰もが心の隅にある"氷点"を引き出して見せた。しかし、氷点を溶かせる熱いものも我々人間の心に在る事も伝えた。作品の中で '人間は生まれながらにして罪を背負っている' と言う基督教の '原罪' 即ち、アダムが禁断の果実を食べた瞬間から人類に受け継がれた原罪を陽子父娘に喩えて、陽子は殺人犯の娘として生きなければならない運命に置いた。人間はどこまで他人を愛し、許せるか?という倫理的なテーマを節制且つ完璧に捉えた見事な大作❗️★5❗️2018/10/06
mukimi
146
息つく隙なく読み終え、読後は暫し頭を抱えるほどの衝撃が。ほんの少しだけと人を裏切ること、人のせいにすること、本心を口に出せず勝手に自分で作ったストーリーで自らを納得させること、負の感情に踏み込まず何も無かったことにすること、大人はそんな小さな歪みを積み重ねて生きる。真っ直ぐなだけでは生きられないから。でもそこに、許すこと、信じることの力を突き付けるクリスチャンである筆者。高度なエンタメ性の背後にある筆者の壮絶な過去、深い信念と強い意思を思うと頭が上がらない。続編がある様なので頭を冷やしてから取りかかろう。2023/01/21
Nobu A
145
上巻に続き、下巻も読了。ドロドロとした憎悪劇。結末の大どんでん返しには驚嘆。最重要人物は間違いなく辻口夏枝。人の皮を被った怪物。虚栄心、嫉妬心、猜疑心、復讐心と様々な気持ちが情緒纏綿。果たして現実的なのかと疑問に感じたが十人十色。もしかしたらと思わせる緻密な物語展開と各登場人物の巧みな行動及び心理描写。キリスト教の原罪を基底に書かれたのが60年前。しかも処女作と言うのが単純に凄い。読み易い措辞と文体。読み継がれる作品の典型。熟読玩味。明日早速図書館に返却し、「続氷点」を借りてこよう。三浦綾子著書2冊目。2025/02/09
ナマアタタカイカタタタキキ
115
人間の業というものについて思わずにはいられない。時折激しい感情の発露はあれども、全体の印象としては内省的で、長い夜明けを彷彿させる物語だった。或いは、夜は明けてなどいなければ誰も助かってもいない、陽子の生命は救われても魂は凍てついたままだと考えるべきか。今となってはその陽子の直向きささえ、単なる潔癖にすぎず、場合によっては不遜かもしれなかった…とは、10代の健気な少女に対して厳しすぎる言葉だろう。善でもって悪に立ち向かう際、己の罪の可能性を省みることは不可欠だ。その時に必要なものこそが“信仰”ではないか。2021/05/05
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