内容説明
青い天に浮かぶ一朶の白い雲のみをみつめて坂をのぼっていったこの小さな国が、やがて国民を無謀な戦争にかりたてていった道。二十一世紀に生きる私たちは、そこからなにを読みとることができるのか。『花神』『峠』など数多くの作品の舞台となった戊辰戦争、『坂の上の雲』で壮大に描き上げられた日露戦争、そしてついに“書かれなかった”太平洋戦争―近代日本を決定づけた三つの戦争を、司馬遼太郎はどうとらえていたのか。新聞記者時代から司馬に兄事した筆者が、ジャーナリスト、研究者、さらに若き日の海軍兵学校生徒としての体験をもふまえてたんねんに読み解く。昭和を代表する国民的作家の近代史観を浮き上がらせる意欲的な試み。
目次
司馬遼太郎と三つの戦争―戊辰・日露・太平洋(戊辰戦争;日露戦争;太平洋戦争)
司馬遼太郎さんへのレクイエム
司馬遼太郎さんと新聞
司馬遼太郎の原風景
著者等紹介
青木彰[アオキアキラ]
1926年、東京生まれ。東京大学文学部教育学科卒。49年に産経新聞社入社、教養部長、社会部長、論説委員、大阪・東京両本社編集局長、フジ新聞社社長などを経て、78年から筑波大学現代語・現代文化学系教授。90年、東京情報大学教授。東京新聞客員、朝日新聞紙面審議会会長代理、NHK経営委員、司馬遼太郎記念財団常務理事などを歴任。2003年12月死去
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感想・レビュー
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AICHAN
29
図書館本。司馬さんの弟分を自称する青木彰氏が司馬遼太郎を語る。戊辰、日露、太平洋戦争を司馬さんはどう見ていたかについて語り、作家・司馬遼太郎を読み解く。司馬さんは、日露戦争までは日本人は「公」の意識を持ち「私」を抑制する素晴らしい民族だったという。「公」というのは自他の人権を守ることであり、またヒトや他の生物が生命を託しているこの地球を守ろうという意識のこと。それが日露戦争の勝利以後、夜郎自大になって破滅への道を突き進んだと司馬さんは見る。現代の日本はさらに破滅へと進んでいるように思われる。2017/02/22
紙狸
3
2004年の刊行。青木彰さんが司馬遼太郎さんについて行った講演、司馬さんについて書いた文章からなっています。巻末には、村井重俊さんという朝日新聞記者が、青木さんと司馬さんの交流について書いていて、このふたりと新聞界の関わりについて知るのに参考になります。 たとえば、産経新聞大阪本社写真報道局長の山本泰夫さん、妻の眞理子さんは青木さんの弟子であると紹介されています(p207)。山本泰夫さんが青木さんから、司馬さんについて書いたものをまとめたいという相談を受けたことが、この本ができたきっかけのようです。2017/12/29
kitarou
1
「無償の功名主義」こそが新聞記者の行動原理だと喝破する司馬遼太郎。すべての日本人の仕事ぶりがこうありたい。2011/08/18
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