内容説明
突如として世界に出現した謎の領域〈エリアX〉。そこでは生態系が異様な変化を遂げ、拡大を続けていた。監視機構〈サザーン・リーチ〉に派遣された、生物学者をはじめ女性4名からなる調査隊は領域奥深く侵入し、地図にない構造物を発見、そしてそこに棲む未知の存在を感知する。さらに進むべきか、引き返すべきか? 無事に帰還できた隊は過去に存在しない……。大型エンタテインメント〈サザーン・リーチ〉三部作開幕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
165
灯台の光源に潜む何者かが、我々の世界を変容させていく。それがどんなものであるか、正体は全部は明かされない。(少しそれらしい説明は最後に現れるのだが。)灯台周辺の狭い領域Xが何か変だということで調査隊が送られ、そこが見えない壁に覆われていて、うっかり見えない壁に触ると人が消えてしまうという。エアコン効きすぎで肌寒くなるようなうっすらした気味悪さを満喫できる。調査隊はどうなるのか?まぁ表題が全滅領域ですから。監視機構に進む。 2015/07/15
nuit@積読消化中
128
サザーン・リーチ三部作の開幕!映画『アナイアレイション』の予告編を観たら、待ちきれなくて手に取ってしまった!なんなんだ!?この世界観と意識変容現象。解説にも書いてあるようにまるでドラック小説を読んでいるような心地。単なる冒険SFとしては片付けられない。現代版のクトゥルフ神話のようにも思える。先は気になるので二部へと進みたいところでしたが、ちょっと頭が追いつかないため、いったんお休みしてから読もうと思います。映画『Annihilation』 https://youtu.be/89OP78l9oF02018/01/12
藤月はな(灯れ松明の火)
101
映画『アナイアレイション』の原作。『ソラリス』のように自我が揺さぶられ、変容した死人が還ってくるのは原始的な恐怖を掻き立てられる。下手すりゃ、SAN値直葬なエリアXのイメージは完全のH・R・ギーガー世界をイメージしていました。その為か、その世界は禍々しくも美しく、安らぎがありました。人間社会では希薄だった生物学者にとってここは彼女だけのユートピアだったと思います。一方、個人性を剥ぎ取った上で真実を知っていたであろう監視機構や言動に不信感を抱かせる心理学者、エリアX潜入前の生物学者の夫に嫌悪感を感じます。2018/07/24
南雲吾朗
68
一人称で綴られた物語。つまり、事象に対して全体像を多面的に把握するのではなくある一側面、ある部分しか捉えていないという事である。しかし、それでもこの物語に引き込まれる、あるいは共感できるのは、結局人間は個人個人で限られた側面でしか世界を把握できないからだろう。内面的描写も、構成する世界観も想像の範囲を超える。人を個人として維持している根幹や人間の脆弱性、世界の非情さ、人としての世界の捉え方。それらがすべて内包されており、かつ、崩壊している。凄い世界を見せてくれた本だった。2021/08/16
おかむー
54
うーむ、3部作読破して見極めたくもあるのだけれどとにかく疲れる作品でした。『可もなし不可もなし』。人の住めない異質な領域“エリアX”、調査のために送り込まれた主人公・生物学者を含む4人の調査チーム。“事象”とよばれる何らかが起こったことによって閉鎖されている“エリアX”に何があるのか、調査の目的は?作品全体を通じて、とにかく情報、状況が明確にされないこと、生物学者の過去や内面に話が寄り道するため終始はぐらかされる感触、結局この巻だけではホラーなのかSFなのかもあやふやですっきりできないんだなぁ。2015/02/10