内容説明
兄を殺した女? 彼女のことを聞きたいの?
〈僕〉は、失踪した恋人を探して彼女の生涯にかかわった男女を訪ね歩く。
「ルリは少女娼婦みたいだった。幼気(いたいけ)な、大胆な、ちょっと痛ましい」
「ルリを見ていると、心を鷲づかみにされる。うっかり油断すると、彼女の存在感に巻きこまれそうな感じなんだよ」
「るりは、本質的にこわいもの知らずな女なのよ」
「るりに触られると、どんなに疲れているときも、からだの隅々まで欲望で満たされた。どこまでも貪欲になれそうだった」
「るりはサーカスの綱渡りの少女、みたいな感じ? 安全ネットなしの」
彼らが語る、これが、あなたなの? それは彼らの心の、割れた鏡に映し出された、無数の破片のようだ。
*
何かの予兆のように、〈あなた〉の複雑な過去と、天才少年ピアニストだった〈僕〉の挫折と後悔に満ちた半生が響き合う。それから〈僕〉は、少しずつ〈あなた〉のもとに近づいていく。〈あなた〉の後ろ姿を見ながら少しずつ。そこには、僕のピアノ、少年時代の調べが響きつづける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六花
8
やさしいピアノの旋律が聞こえてきそう。どんなひどい展開がまっているのか、と身構えたら、とてもやさしい話だった。「瑠璃」という名前の通り、きらきらと色を変える女性。の(「愛」の話。2014/07/25
acchanpon
2
読み始めた時と、読み終わってからとでは印象が違う。奔放で華やかな女性の話かと思ったが、そうではなかった。一部は長谷川瑠璃という女性についての伝聞が中心で、二部が紀本志朗という叙述者に焦点があてられる。自殺してしまったノブや家族の描き方が物足りない気もする。瑠璃の人生にもう少し踏み込みが欲しいし、瑠璃と志郎の関係が素敵なので、出会いや共に過ごした時間がもっと描かれていたらよかったのにとは思うが、全体としては面白かった。特に志朗が魅力的だと思う。冒頭の志朗の独白があんなに思わせぶりでないほうがよかった気がする2020/06/07
へそ
1
高校3年の時、図書館で見つけた。あれから、書店で探して、2019年の夏にやっと購入した。久しぶり、という感じ。嬉しかった。 そこ彼処に、危うさを含んだきらきらとした光が散りばめられている。おそらく80年代に青春を過ごした作者の文章のもつ、私の世代(平成10年生)とは違う向こう見ずな危うさと明るさが物語の魅力のひとつになっているように感じる。 そこにいないひとを想うこと。 愛するひとのことを想うとき、同時に、自分のことについても辿っていかなければならないような気がする。
より
0
志朗が何故、江崎隆雄に対してフルーツナイフを持って行ったのか。(そんなに憎む様な事あったっけ?)瑠璃は何故、展生と香夏の母親のいる施設で働いているのか。(復讐の予定?)……分からん。2015/11/23
シュウ
0
久々の野中さん。作風が随分変わったように感じました。江國香織さんにますます近づいたような。。。なんだかヒヤリと怖くて、ラストにはどんな絶望が待ってるのか、と思いましたが、さてさて。前半と後半で描き方を変えているのは素敵でした。★★★☆☆2014/12/30