光文社古典新訳文庫<br> 神学・政治論 〈下〉

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光文社古典新訳文庫
神学・政治論 〈下〉

  • ISBN:9784334752903

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内容説明

「本書は、哲学する自由を認めても道徳心や国の平和は損なわれないどころではなく、むしろこの自由を踏みにじれば国の平和や道徳心も必ず損なわれてしまう、ということを示したさまざまな論考からできている」。宗教と国家、個人の自由について根源的に考察したスピノザの思想こそ、現代において読まれるべきである。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

40
『エチカ』から入り本書を読むか検討している人は、読む必要がないと思います。独裁者に対抗するためには、何らかの特別な啓示によって約束された人に限られる。聖と俗を一致させるのが手っ取り早いというのは、アダム・スミスの考えと近いのではないでしょうか。宗教上の理由から市民生活上の権利をはじめ自由が擁護されるのは、我々の目からは射程が狭い議論だと映ります。現代でも知らずに我々はこの論理を使っていますが、「聖戦」を行う論理に非常に近く、無意識に潜在しているものを批判するためにならば読む意味はあるかも知れません。2021/06/16

おたま

38
下巻ではそれまでの神学論(聖書論)から一気に政治論へと転換する。16章と20章に特に顕著。スピノザは、たぶんホッブズ(未読)の「社会契約論」から多くを継承しているように思う。人間はその本性からして自由な存在ではあるが、自由同士が衝突を繰り返すようでは安定した社会とは言い難い。そこで相互に契約し、自己の自然の権利を譲り渡すことで「至高の権力」を生み出す。それに従うことで社会を安定させる。そこに国家が生まれてくる必然もある。これがたぶん、法による統治ということだろう。宗教とは決別して、権力は語られる。2023/05/07

壱萬弐仟縁

28
モーセは自分の指摘を民衆にもっともらしく思わせようとして、自分で考えてイスラエル人に「わたしがお前たちとともに生きてきた間でさえ、お前たちは神に背いてきた。だとすると、わたしが死んだあとはなおさらそうなるだろう」と語った(47頁~)。契約が破られたら、破った側に利益を上回る害が生じるようにしておくよう努めてなければならない(159頁)。ひとはそれぞれ自分の欲望に引きずられ、その精神は理性の入る余地など残らないくらい、往々にして貪欲や虚栄心や妬みや怒りに強く支配されてしまう。 2015/01/14

chanvesa

27
政教分離をどちら側からも徹底していく姿勢は、まさに両者の狭間にあった哲学をいかに確立していくかが背景にあったのだろう。「国というものは実は自由のためにある(304頁)」という宣言はもちろん理性という大前提にある。この本の中で明言されているわけではないが「思想・信条の自由」、内面的自由が最上位にあり、その補完的な手段として「表現の自由」のような外面的自由があると無理矢理だが読めないだろうかと考えていた。いまや「理性」が怪しい。理性をブレーキとするには、全幅の信頼を置くだけでなく、何か補助線が必要な気がする。2015/03/15

加納恭史

24
この本の主題の一つは「神即自然」。主著「エチカ」でも述べられるが、この本の説明が丁寧である。神と自然(厳密に言えば自然の世界を生み出している力そのもの)を同一視するスピノザの立場を力説する。神が自然であるといっても、自然の世界には山の神や川の神や便所の神という無数の神々が宿っているという多神教に慣れた日本人の考え方に近い。スピノザにとっての自然とは、同じ法則に隅々まで支配されるただ一つの世界。この神は無限で、あらゆる自然を内包する。いわゆる汎神論である。従って自然の法則の通用しない外部領域は存在しない。2023/05/09

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