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内容説明
スピノザは本書で聖書のすべてを絶対的真理とする神学者たちを批判し、哲学と神学を分離し、思想・言論・表現の自由を確立しようとする。スピノザの政治哲学の独創性と今日的意義を、画期的に読みやすい訳文と豊富な訳注、詳細な解説で読み解く。『エチカ』と並ぶ主著、70年ぶりの待望の新訳!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
54
スピノザの思想には関心があり、これまでは解説書を読んできた。主著『エチカ』は大変難解だと定評の著作であるので、スピノザの著作に手を着けるのを躊躇していた。しかし、この『神学・政治論』を読んでみると、それほど難しいとは思われなかった。スピノザの語り口は平明だし、吉田量彦の訳も大変分かりやすく工夫がこらされている。「訳者まえがき」でも概要の解説があるし、なんといってもスピノザ自身が「序文」においてこの著書の狙いと、各章の概説を行ってくれている。なんとも丁寧な本であり、スピノザ思想の入門書として最適に思えた。2023/04/25
巨峰
42
途切れ途切れに読んだのだが、本当はもっと一気呵成に読んだ方がこの本を読む上では良かったかも。この本の内容を理解するためのキリスト教的教養に著しく欠けている私ではありますが、作者の生没年をみてかえりみると、科学的理性に貫かれているのに驚く。スピノサは聖書界の古田武彦と言っておきたい。2015/12/13
加納恭史
34
さて、依然からスピノザには興味があったが、エチカは難解なので、暫くためらっていた。汎神論が詳しく書かれていなかったので残念だった。そこで汎神論に至るスピノザの良き本が本書であることが分かり手に取る。まだはじめにと序文あたりから読み始めだが、私の期待にそう内容の要約で大変に嬉しく思います。良本に巡り会うのは実はなかなか難しい。キリスト教徒の偏見が覚めやらぬ17世紀にスピノザが信教の自由を、それも汎神論を唱えたことは実に素晴らしいことだ。だだ当時は発禁処分であり、現代を切り開いた功績は実に見事なことだな。2023/05/03
ころこ
34
我々近代人は『神学・政治論』の内、政治論のために前半を紐解いたはずです。目次をみると、どうやら第16章位にならないと政治の話は出てこない。しかも、『エチカ』をはじめとするスピノザの思想にとって、聖書解釈は重要ではない。とすれば、前半は読む意義に乏しい。ということで、大半を飛ばしました。せっかくの新訳が、後半が読まれないことになるのは勿体ないので、後半に労力を割きましょう。2021/06/06
壱萬参仟縁
29
1670年初出。悲惨な状況におかれているからこそ、民衆はどこにも長く安らいではいられない。民衆に最も歓迎されるのは、新しいもの、裏切られたことのないものに限られる(34頁)。民衆は迷信にとらわれやすく、永遠そのものよりも時の遺物を好むから神の言葉それ自体よりも聖書の各巻を崇拝しがちなので、そこからさまざまな先入見が生じてきた(45頁~)。ものごとを判断する自由と、信仰の根拠を自分の好むように解する権利は、どんな人にも保障されなければならない(47頁)。 2015/01/14