内容説明
1906年、世界初のアニメーション映画で、黒板に絵が描かれるのはなぜか。ポパイの歩行、ベティ・ブープの大きな口、『トムとジェリー』の音楽の魅力とは? アメリカン・アニメーションの傑作を読み解き、ウィンザー・マッケイ、ウォルト・ディズニー、フライシャー兄弟など、巨匠たちの表現技法の謎に迫る。(電子化にあたり図版を削除しました)
目次
アニメーションとヴォードヴィル
『リトル・ニモ』―ウィンザー・マッケイの王国(一)
『恐竜ガーティー』―ウィンザー・マッケイの王国(二)
商業アニメーションの時代
科学とファンタジーの融合―フライシャー兄弟
映像に音をつける
ミッキーはなぜ口笛を吹くのか
ベティ・ブープはよく歌う―フライシャー兄弟の復活
トムとジェリーと音楽と―スコット・ブラッドリーの作曲術
ダフィー・ダックに嘴を
ダフィー・ダックに嘴を
アニメーション界と現実界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
69
口笛とか歌とか嘴とか口周りに着目した論考。思わず納得しちゃった。終章も大事。2017/04/18
keroppi
28
初めてのアニメーションから、初期のアメリカアニメについて、技術革新とその表現テクニックを語る。かなり多くの作品がyoutubeで見られるので、それを見ながら読んだ。初めてのアニメ「愉快な百面相」、タイトルになっている口笛を吹くミッキーが登場する「蒸気船ウィリー」も、検索したら見られます。いい時代になったものだ。アニメの動き、絵と音楽の関係、絵とセリフの関係、等、とても興味深く楽しかった。絵とセリフの関係が、日本とアメリカでは違い、スーパーヒーローの口の表現まで違っているというのは、驚きだった。2017/04/06
しゅん
13
初期のアメリカンアニメーションを見世物文化や蒸気船レースなどの文化史から読み解くと同時に、リップシンクや三次元の表現など技術的な視点からも考察を深めていく。キャブ・キャロウェイとフライシャー兄弟との関係など、音楽との関わりについての記述は特におもしろい。アニメーションに限らず、映像と音楽との関係性について学べる本。2018/08/08
Decoy
5
期待に違わぬ詳細で刺激的な考察。「なぜその表現になっているのか?」への答えは、「作者がそうしたかったから…」や「時代がそうだったから…」ぐらいしか思い浮かばなかったが、きっちり歴史的・社会的・文化的な背景があるということが、よく分かる。細馬教授の授業を受けてみたい!2018/02/20
蛸
4
世界初のアニメーションから始まってアメリカのアニメーション表現が様々な切り口で語られる。当時の見世物文化や技術的な背景を手掛かりにして作品の素朴な疑問を追求する著者の手腕はお見事と言うしかない。文章も平易で読みやすい。加藤幹郎の『映画館と観客の文化史』と併せて読むと文化的背景の理解が深まると思う。2016/04/19