内容説明
捕まれば、死の送還が待っている――。かつて中国・瀋陽の日本総領事館の門前で、中国武装警察が捕えようとする中、必死に敷地内に逃げ込もうとした「脱北者」の姿をご記憶の方も多いでしょう。北朝鮮の金体制から逃げ出した「脱北者」は中国当局にとっても好ましからざる人々でした。2013年、ようやくその脱北問題で国連の人権調査が入りましたが、北朝鮮は一切を否定するなど、彼らの苦難に終わりの見える様子はありません。本書の著者、野口さんは脱北支援、すなわち中国内に潜伏する脱北者たちを国外の安全な場所まで逃がす活動に身を投じました。その距離、直線にして3000キロ。密告者の目を逃れつつ成功して命を助けられたケース、失敗して大きな犠牲を払ったケース。そして入獄した中国南部の「看守所」での、個性の際立った同房者たちとの奇妙な体験。その全部を克明に描きます。
目次
序章 中国・南寧
第1章 北朝鮮から来た姉妹
第2章 ハルピン出発
第3章 中国脱出
第4章 拘束
第5章 入獄
第6章 看守所というところ
第7章 裁判、そして出所
終章 北朝鮮から戻ってきた女たちの今
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
360
本書の刊行は10年前だが、その当時と北朝鮮、中国それぞれの事情はそれほど変わってはいないだろう。著者は北朝鮮からの脱北者を支援するNGO組織に属し、支援活動を行ってきた。前半はその成功篇。ハルビンを出発し、北京、上海、南寧、ハノイを経て、プノンペンから日本へと二人の姉妹を脱出させた。後半は失敗篇。前回と同じルートを試みたものの、南寧で逮捕されてしまう。もっとも、そのお蔭で南寧の看守所(=留置所)に8ヶ月も収監されることになり、およそ信じがたいほどの貴重なレポートを残すことになった。 2020/02/15
ロッキー
18
こういった活動をしている人がいるとは知らなかったので新鮮でおもしろかった。中国で捕まり、投獄されている時の生活もリアルで情景がうかんだ。2014/07/30
たか。
8
不謹慎な言い方になるけど、下手な冒険小説より遥かに面白い。リアルです。それにしても野口さんは凄いです。リスクが大きすぎる。正義感が強い人なんでしょうね。真似はできませんね。それにしても北朝鮮は何とかならないのかな。酷すぎだよ。2013/11/05
さとむ
7
脱北を描いた韓国映画「クロッシング」を思い出した。これまで観た映画の中で最も涙を流した作品で、作中で描かれていた「北朝鮮のリアル」を思うと今でも胸が苦しくなる…。脱北を支援する人々(しかも本作筆者の野口さんたちのように大きなリスクを冒して)が日本にもいることには驚き。また、今週の新聞で「脱北者を装って情報活動をする北朝鮮スパイもいる」との記事を読んだが、人道支援の裏に潜む危うさを知り、空恐ろしくなった。2013/10/25
ちんれん
6
面白い。北朝鮮難民を助けるNPO法人に勤めた著者が中国東北部から列車・バスを使い南方の広西省経由でベトナム、カンボジアへと脱北者を逃し日本に連れ帰る話。スリルに満ちていて面白い。1度成功するものの2度目に公安に捕まり、拘置所、逮捕、長期拘留、罰金と5年間の入国禁止処分を受けて日本に送還されて話が終わる。後半の拘置所での暮らしは若干長くて読み飛ばした。捕まっていても金次第で待遇が変わるところは中国っぽかった。2013/12/21