内容説明
日本の人々は憲法を考えるにあたって、まずアメリカが太平洋戦争を自分たちに全く都合の良い形で日本国民のアタマに詰め込んだことを知らなくてはならない。日本にとって大東亜戦争は、近代国家として生きるための資源や市場を求めての経済戦争だった。だがアメリカはこの事実を全面的に否定し、「他民族を圧迫する侵略戦争である」と決めつけたのである。ヨーロッパから独立したアメリカは、両隣がカナダとメキシコという極めて弱く脅威にならない国であったこともあり、自然、国力の拡大を太平洋に向けることになった。日本もまた、明治維新が終わり、日清戦争と日露戦争に勝った後、資源を求めて南方に勢力を向け始めた。だが、すでにアジアは西欧諸国に蹂躙されて、ほとんどの国が植民地になっていた。勝者が歴史を書くという常識から言えば当然の結果であるが、いま憲法を見直すにあたっては、こうした歴史を無視するわけにはいかない。(本文より抜粋)
目次
序章 アメリカは変えにくい憲法を日本に与えた<br/>第1章 昭和憲法のどこがおかしいか<br/>第2章 平和憲法は勝者のトロフィーだった<br/>第3章 アメリカは日本人を作り替えようとした<br/>第4章 異常事態のもとで憲法が作られた<br/>第5章 アメリカはなぜ日米安保条約を作ったのか<br/>第6章 日本人は自らの力で国を守ることができる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
p.ntsk
13
憲法制定当時の関係者とのインタビューを収録。複数者との対話をとることで極端な主観が削ぎ落とされある程度客観的な実像が浮かび上がっているようです。シリア問題や財政問題を抱えてアメリカもかつての勢いはなく世界の警察官であることを辞めようとしている今、日本を取り巻く情勢を鑑みて独自に国を守れる態勢を整えるべきだと思いました。憲法が制定され安保条約が結ばれた当時と今とでは想定された世界情勢も変わっています。何より主権国家として国の存亡に関わる国防を他国に依存するのはあまりにも心許ないと思いました。2013/10/19
速読おやじ
6
改憲論議が盛んな今日この頃ですが、今の日本国憲法ってそもそも誰がどのような目的で作られたのかを復習してみようと思って買った本です。占領軍によって、日本が今後アメリカに歯向かわぬように作ったのが日本国憲法であるという事実と、世界に類を見ない極めて崇高な理想を持った平和憲法であるという事実。ガルブレイスは、「平和憲法お陰で日本は経済的に成功し、世界で平和を志向する国として尊敬されている。誰が作ったかは関係ない。いい憲法はいい憲法なのだ。」と言う。確かにそうかもしれない。でも、本当にそれでよしとしていいのか?2013/08/15
Mitz
1
改憲に関する報道や議論を見聞きしながらいつも思う。「なぜ、議論の対象になっている昭和憲法に関して、その起源に遡り本質的な考察をしないのか?」と。昭和憲法(特に9条や96条)の中身について確たる意見を持っているわけではないが、善し悪しは度外視して客観的事実としてこの憲法が米国によって作られた事は事実であり、教育やマスコミがそれに触れずに、実に表層的な議論だけが飛び交う事が非常に嘆かわしい。「右か左か」とか「改憲か護憲か」という二元論に凝り固まらずに、冷静に戦前~戦後史と向き合う事。これが今必要な事だろう。2013/07/11
えいぷりる
1
「それは日本に対する”報復”だったー(帯より)」「日本の憲法は戦争直後、アメリカから押し付けられたものである。その憲法を改正することによって、ようやく、新しい日米関係が始まる。」 日米安保条約は空洞化している。そもそも日米安保条約は日本を縛る目的で締結されたが、アメリカの国力が相対的に衰退して、日本を封じ込めておく能力がなくなってきている。尖閣防衛をアメリカに任せられると思うのは間違い。日本人は、自らの力で国を守ることができる。2013/07/16
長南 徹
0
終戦当時の憲法策定までの背景が良く取材されている。終戦当時の国際情勢や当事者の政治観や思想が複雑に絡み合って、世界でもまれな平和憲法が出来た事が良く分かった。あと一番最後に書いてある著者とドラッガーとの対談も非常に興味深い。それにしても学校で教える日本史って戦前戦後の近代史をきちんと掘り下げないのだろう?2014/08/03




