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内容説明
「雨に降られた」はよくて「財布に落ちられた」がおかしいのは、なぜ? 「西村さんが公園の猫に話しかけてきた」の違和感の正体は? 認知言語学という新しい学問の奥深い魅力に目覚めた哲学者が、専門家に難問奇問を突きつける。豊富な例文を用いた痛快な議論がくり返されるなかで、次第に明らかになる認知言語学の核心。本書は、日々慣れ親しんだ日本語が揺さぶられる、“知的探検”の生きた記録である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(haro-n)
58
認知言語学のとても面白い入門書。 認知言語学とは、私たちのものの見方・感じ方・考え方、生き方や行動様式という観点から言語を捉えていこうとする学問。 間接受け身、使役構文、メトニミー、メタファー…どの話も目から鱗で知的好奇心をくすぐられた。使役構文については今までの理解と全然違っていた(笑)。認知言語学がどういう学問なのかが具体的に分かって良かった。2019/05/23
活字の旅遊人
51
なかなか面白かった。2013年初版で14年の五刷を積読していたようだ。やはり旬なうちに読んだ方がいいな。まだ生成文法を脱しきれていないのがよくわかる。それでも意味論、プロトタイプ、使役と受身、メトニー、メタファーと話題は尽きない。もっと学生時代に勉強すべきだった、と久々に反省。こういう議論、ゼミでやった記憶がないのは、何故だろう(笑)。ただやはり日本語を使って日本語を分析するのは限界があるよな。いや、そんなこと言ったら言語学そのものが、危うい。という話は観察者の存在が現象を変える量子力学に通じる気がする。2022/03/26
megumiahuru
40
「昨日、財布に落ちられました」はどうしておかしいんだろう? 確かにおかしいことは分かるけど、それがなぜかと聞かれると・・・? 普段、手足を動かすことは何も考えなくてもできますが、その仕組みを説明するのは医学博士でも難しい。言語学はまさに、「言葉の医学」だと思いました。しかも、意外と歴史は浅い。ソシュールにチョムスキーにレイコフ、生成文法に認知言語学。難しい内容も対談形式ですんなり頭に入ってきます。言葉という海の波打ち際で遊ぶもよし。深海を探検するもよし。これほど身近で楽しい玩具もないのかもしれません。2014/04/07
Koning
37
新書で対談かよ!と思ったけれど、これはやっつけ仕事ではなかった。認知言語学というある意味科学を指向して来た言語学の中でまたニセ科学あるいはトンデモ方面へ舵を切ったように見える学問を二人の議論からざっと眺める。突っ込みの入れ方は流石に屁理屈捏ねれば哲学者という感じでまとめた編集の力があったのか、さくさくと恐らく楽しく読める。しかしやっぱりなんだろうか。人文系のダメさの基本になっている最初の問題の定義とかその辺がこの人でもやっぱり不安になるというか。2013/09/03
白義
28
「太郎が花子に叱られた」と「花子が太郎を叱った」は同じ意味か否か?こんな意外で際どい問いの数々から、認知言語学という学問が考える言語観を明らかにし、またその是非を問い詰めていく、分かりやすくも白熱した対談。「今、村上春樹を読んでいます」というメトニミー(実際に読んでいるのは村上春樹の小説で本人を読むということは普通ない)は、村上春樹作品という対象を参照するために村上春樹という言葉をとっかかりとして使っているという、メトニミーの参照点理論など、言語の使われている現実に寄り添いながらも意表外の仮説が多く楽しい2015/09/23