内容説明
遠州灘で遭難し北アメリカに漂着した岩松、久吉、音吉の3人は、現地の先住民に捕らえられてしまった。しかし偶然にも岩松たちの窮状を知ったイギリスの商社・ハドソン湾会社の厚意で、帰国の途が開かれる。大きな期待を胸にイギリス軍艦イーグル号に乗り込んだ3人は、幾多の困難を乗り越えロンドンの地に降り立った。そこで見たものは、鎖国政策を行う祖国とはあまりに違う進んだ光景だった。魂をゆさぶる人間ドラマの中巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
91
北アメリカでの生活は壮絶なものでした。辛かったですが、久吉の明るさや音吉の優しさ、頼れる岩松は互いに助け合っているのを見ると応援したくなります。郷里への想いを忘れず、希望があるからこそ、苛酷な中でも言葉を覚え、何とかやっていけたのでしょう。窮地を救う出会いもあり、帰国への道も見えつつ、ロンドンへ降り立つ3人。祖国と違う進んだ光景を見た3人の運命はこれからどうなっていくのでしょう。下巻へ続きます。2016/02/17
ソーダポップ
41
遠州灘で遭難して北アメリカのプラッタリー岬に漂着した岩松、久吉、音吉の三人は、インディアンのマカハ族に捕らえられ奴隷として過酷な生活を送る羽目になる。三人は、マカハ族の所有物として生命の危機に晒されようとしたとき、奇跡的にも岩松たち三人の窮状を知ったイギリス商社、ハドソン海運会社の厚意によって帰国の途が開かれる。イギリスの軍艦に乗り込んだ三人は、祖国の地を踏む日を待ち続けていた。魂を揺さぶる人間ドラマの中巻。2021/07/09
piro
35
北米西海岸フラッタリー岬に漂着した音吉ら三人。奇跡的に生きて陸に上がれた彼らは、一時は原住民の奴隷となってしまうものの、ハドソン湾会社の好意で原住民から引き取られ帰国の道が開かれます。西海岸からハワイを経、ホーン岬沖を廻ってロンドンへ。行く先々で出逢う人々が、一年以上の漂流に耐え抜いた執念と彼らの誠実さに尊敬の念をもって接する様は日本人として何だか誇らしい気分。そんな中言葉も通じない異国の民を篤く世話してくれた人々の信仰は、母国では邪教として禁じられたものながら、彼らの心に確かな変化をもたらした様です。2020/12/11
まーみーよー
25
音吉達は北米に漂着、先住民族の「所有物」となり、ハドソン湾会社の人間に救助されロンドンに至る。マカオ行の船でアジアへと向かうところまで。ハドソン湾会社といえば吉村昭「海の祭礼」の主人公ラナルド・マクドナルドの父が総責任者だった。吉村氏の著書でもラナルドは音吉達に影響され日本に渡ったとされていたが、本書では音吉達と直接接触しているのが興味深い。また三浦さんらしいのが、キリシタンを恐れる音吉達が、救助され出会った人々を見て「キリシタンはお上がいうように絶対悪なのか」当惑する心情にページを裂いている点だ。2020/09/15
ちょん
25
壮絶なる生活を強いられている3人。そんな中で、言葉も覚え、優しい人との出会いもあり幸運にもめぐり合い日本への帰国へと一歩ずつ近づいていく。次は下巻。3人の未来はどうなっていくのか。2015/05/26