内容説明
蒙古軍の圧倒的な力に壱岐は蹂躙され、多くの民が命を奪われた。主君を失いながらも戦火を生き延び、蒙古への復讐心に燃える宗三郎。絵師を目指して隣国の宋に渡った二郎。裕福な養父のもとを出て、芸の世界に身を投じた麗花。それぞれの道を歩む三人は、年を経て再び蒙古の脅威にさらされる。凄絶な戦いを生き抜き、若者たちは光をつかむことができるのか。若き才能が活写する、迫真の歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
51
素晴らしい才能にめぐり合えた喜びを感じる、そんな読後感。元寇という日本民族(あえて日本国とは言わない)の未曾有の危機を、若い3人の男女の目線から外すことなくしっかり描ききった大作。魅力的な登場人物があっけなく次々に死んでいく戦争という愚行のなか、3人が最後まで生きのびれるのか心配になったよ。蒙古人・高麗人・南宋人そして日本人の死屍累々の中生き残った人たちも傷ついている。船戸与一さんの「猛き箱船」も少し思い出した。絵巻で有名な竹崎季長も登場しているし、歴史小説に興味ある方は、是非読んで欲しい。おすすめ☆2015/09/06
けやき
29
満足でした。戦の悲惨さ、無益さがよく伝わってきました。時宗ら幕府上層部と民のために戦った武士の温度差が激しい。二郎と麗花にはいい結末。宗三郎にも幸せが待ってることを祈って。2020/05/02
スー
22
133絵の勉強で宋に渡り元軍として日本に戻った二郎と壱岐を生き延び松浦党の一員になり復讐に燃える宗三郎と音楽と踊りで戦で疲弊した人々を励ます旅の一団に入った麗花の3人は違う道を歩み元寇を体験する。そして物語を彩るのが壱岐守護代の少弐資時と竹崎季長、資時は守護代の誇りの為に壱岐に残り大群を相手に壮絶な戦いを行い季長は失われた誇りを取り戻す為に戦場に立つ、他の武士達も誇りや民を守る為に戦うのに幕府はメンツの為に元に対して使者を切るという強硬な態度をとり戦の実態も知らず現場任せで九州武士団との間に溝が出来ていく2020/10/01
takahiko
16
二郎や宗三郎とそれぞれと関わるいい味を出していた脇役陣が凄惨な戦の犠牲になっていくのは、上巻同様に読み進むのが辛くなりました。幕府の無策な対応に多くの民衆が犠牲になるも、戦後から立ち直っていく場面の「結局、いちばん強いのは武士でも貴族でもなく、民なのですよ」このセリフは、いつの時代も変わらないなと思いました。多くの人達に麗花の笛の音が届きますように。2013/08/18
TheWho
9
下巻に入り、絵師を志し南宋に流れ着くが心ならずも河南軍に従軍させられる富裕商人の息子、文永の役で壊滅した壱岐で生き残り復讐を誓った御家人の息子、文永の役で謝国明の養女となるが、芸の道に身を投じた高麗遺臣の娘の三人の主人公は、三者三様の立場で、更に凄惨な弘安の役に遭遇する事となる。三人の立場が、南宋遺臣、九州御家人、九州の民を、そして竹崎季長の蒙古襲来絵詞や後の朱印船貿易、能や女歌舞伎に連なる遊芸等日本文化の発展を暗に示唆しているとも思えた。元寇と歴史のうねりを描写した秀作です。2017/05/28