内容説明
熟鮓、醤油、鰹節といった日本の伝統的な発酵食品を後世に残す豪華限定本を作ってほしい――。謎の老人松葉伊志郎から依頼を受けた船木聖司は、早速祖母の死とともに消えていた糠床を蘇らせる。その後、料理研究家の丸山澄男の協力で日本各地の職人を訪ねるうちに、微生物の精妙な営みに心惹かれていく。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei302
59
この作品、清々しい印象で、宮本輝氏の作品ではかなりの好印象の記憶が。主人公の青年がぬか床作りを始めて、糠漬けに開眼する部分は覚えていたけど、生死観や「豪華本」作りを生業にしていることはすっかり忘れてた。日本の伝統的発酵食品の豊富さに驚いた。船木聖司は自分の進むべき道を見つけることが出来るのか。下巻へ。2022/02/05
すしな
37
082-24.部数限定の豪華本を手がける青年が、謎のお金持ちから発酵食品についての本の依頼を受ける話でした。天に行っちゃった人が残していったいろいろな思い出が、地に残っている人に時間を超えて影響していくといった醸造していくようなストーリ展開でした。自分も自家製の漬物や梅干しの環境で育ちましたけど、そう言う無添加な環境って贅沢だったんだなぁと思いました。発酵食品でアレルギーにならないかどうかについては、身内も世間一般的に病気になってたりもしてるのでそれだけでどうこうと言う話ではなような気がします。2024/09/11
シュラフ
23
いい学校に入って、いい会社に入って、頑張って仕事して、人と競争して出世して、そして老後を迎える・・・現代のわれわれの価値観というのはなんと侘しいものだろう。この物語の主人公の聖司は現代社会に対するアンチテーゼとも言うべき生き方をしている。いい歳して家庭も持たず、やっている仕事も不安定、そして発酵食品に関する本をつくろうとしている。どんなに時間がかかったしても・・・ホンモノをつくりあげること・・・それがとても大事なことなのである。異なった視点から物事を眺めて、異なった価値観をもつことでヒトは幸福になれる。2015/06/27
あんな
16
時間がもたらすものはなににも代えがたい。時を経て、想いが強くなる。怒りは許せるようになる。すぐに処理できないことは誰にでも多かれ少なかれあって、時間が解決してくれることって意外とたくさんあるんだなあ。効率を求めすぎず、毎日を大切に過ごそうと思った。2014/01/21
なおみ703♪
14
図書室にあるこの書を2年前から気になっていたが発酵食品にあまり興味がないためにあとがきだけコピーして読んだふりしてた。で、先週宮本氏の『はじめての文学』を読んだのがきっかけで猛烈に長編が読みたくなり勢いで読破。人との出会い、縁の不思議さ、慈愛、命の在り方、死とは何か、不幸が幸福に転ずるときもある、十年二十年のスパンで時を待つということ、職人の技と消費社会への警告…、この作品の思想はその後の『三千光年の星たち』や『水のかたち』にも連なっている。沢山の小説読んでるけど、改めて私は宮本作品が一番好きっと思った。2016/10/30
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