内容説明
徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。 ※本書は2012年5月に発売された角川文庫版『天地明察』を底本に電子書籍化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
697
貞享の改暦を主導した渋川春美の修業時代を描く。上巻全体では、それほど大きな出来事があるわけではないが、青春記としてなかなかに爽やかである。読者の期待が満たされない(晴海にとっても同様だが)のは、"えん"が思いがけずも結婚してしまうことくらいだろう。そして、実はこの巻を進行させてゆく動力となるのが、登場しない関孝和であるという構成は、なかなかに味な趣向である。この関との対面、えんのその後、貞享暦の作成など、大いに期待を持たせながら下巻へ。2024/03/10
遥かなる想い
593
本屋大賞で映画化もされているようなので、思わず購入。舞台は徳川四代将軍家綱で、「暦」を作るプロジェクトが始まり、その渋川春海が主人公だが、算術の天才関さんの人物造形が よい。上巻はどちらかと言えば算術の世界に魅せられた人たちの物語か。2012/06/10
再び読書
477
読んでみて文庫より単行本の方がリズムとして良い様な気がした。ただ、基本算数レベルから苦手なので、少し乗りにくい。関孝和との出会いを期待したが、果たせず下へと続く。少し期待が大きすぎた。「光圀伝」と同じく、兄との関係もお互いに理解しあっている感じが良い。次巻に期待2013/10/22
ehirano1
455
若き科学者/数学者/天文学者である晴海の若さと未熟さ故の苦悩と葛藤がリアルに描かれていて、話ののめり込んでしまいました。苦悩と葛藤に相対しているヒトは私にはカッコ好くしか映りません。後半戦も楽しみ!2024/11/04
hiro
415
さすが第7回本屋大賞受賞作、大変面白い作品だった。江戸時代の囲碁棋士であり、天文暦学者の安井算哲という非常に魅力的な主人公の物語にぐいぐい引き込まれた。このような題材の小説なのでどうしても説明の部分が多くなり、若干テンポが悪くなるのは致し方ないが、その部分は少し睡魔との闘いが必要だった。今秋公開予定の映画では宮﨑あおいが演じるえんと算哲はどのようにして結ばれるのか、まだ姿を現さない関孝和はどのような人物なのか、下巻が大変楽しみだ。 2012/07/12