内容説明
毛利家の使僧として諸国を飛び回る恵瓊(えけい)。織田家との間に入り、明智光秀、黒田官兵衛、小早川隆景、石田三成らと接触を重ねながら、秀吉にも見いだされ、豊臣政権の中枢に入り込んで行く。野心を持ち、時代を動かす立場に上り詰めた男には、隠された秘密があった。関ヶ原の闘いを“演出”した怪僧の数奇に満ちた運命を活写した、歴史小説大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
270
まずまずの読後感。予想通り、ぽんぽんと時が飛び、かなりの駆け足。恵瓊の生い立ちにちょっとしたサプライズが仕掛けられているが、ドッキリ以上の何物にもなっておらず、特に必要なかったのではないだろうか。物語を盛り上げるためにも、もう少し毛利輝元を描き切る必要があったが、存在感が薄く、台詞自体かなり少ない。彼に深みを持たせることが出来れば、もっと格段に読み応えが増したはず。小早川秀秋も同様。この辺りの人物をもっと主軸に絡めていかないと、毛利家まわりを面白く描くのは厳しいだろう。2020/08/22
アイゼナハ@灯れ松明の火
27
秀吉の中国大返しの話を読む度に、機密を守れない外交というのは成功しない外交なのではないかという思いを新たにします。…自分が清水宗治の立場だったら堪ったものではないけどね(汗)秀吉の栄達とともに主家たる毛利をも凌ぐ立身を遂げていく恵瓊。「さりとてはの者」と観た初心を忘れ、秀吉の唐入りを諫止できなかったのは如何にも残念…という気持ちで読んでたからか、恵瓊の出自に関する新たなスポットの当て方には妙に説得力を感じてしまいました。そう言えば大名なのに後継ぎのことに触れられていませんが、一体どうする気だったんだろ?2012/05/16
pdango
19
★★★☆☆毛利側から眺める戦国時代が新鮮で面白かった。2016/11/17
Yukihiro Nishino
10
後編。意外とあっさり終わってしまった感じ。安芸武田家と恵瓊との関係、その秘密の設定や敗者から見た関ヶ原など、もう少し深く掘り下げてもらえれば、より面白くなったと思う。2018/06/24
北之庄
5
作者の火坂氏はテンポが良いのが持ち味。墨染の鎧の下巻には、思わぬ仕掛けも凝らしてあり一気に読了した。一介の使僧から、豊臣政権の一角を担う大名までのし上がった恵瓊。ただ地位が彼を育てることはなく、偉くなるほど見えていた人の心が見えなくなり、他人がバカに見え、脅しつけ、怒鳴りつければ従うものと過信する様になったのが残念。結果として関ヶ原で敗れ、斬首になったものの、徒手空拳から太く逞しくまたあつかましい生き方を貫いた点は見事。男子の憧れであります。2016/03/17