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内容説明
クルルはある青年貴族の身代わりとなってリスボンに向かう。車中、古生物学者のクックック教授と同席し、地球の生命と宇宙の生成について講義を受ける。クルルは深い感銘を覚えるが、一方で教授の娘にも魅了され……。稀代の詐欺師クルルの身に、予想外の展開が! 読み始めたら止まらない小説の面白さがここにある。意図的に古めかしい饒舌な文体を活かした、超絶技巧の新訳!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
「自己閉鎖的で引き籠りを好む私の生得の傾向、孤独と距離と留保にこだわる内面性」(31ページ)。人間、誰しも孤独。今、ひきこもりとかニートとか言われている人も、今は非難されているが、いつかは、そういう連中を見返してやればいい。人生に充電期間は必要だから。「創意工夫に富む人生は、何とまあ見事に、子供の頃の夢を実現させるものだろうか」(137ページ)。常に「向上心」をもって取り組むことの意義。私の中学時代のクラス目標だったのを想起。反面教師の内容なら、ぁぁはなりたくない、と思うし、武勇伝ならそうなりたいだろう。2013/01/28
ぱせり
7
その身軽さ、口八兆、大胆さに、はらはらしたり、あきれたり、でも、ちょっと憎めないやつ、と思ってしまうあたり、ほらほら、いつのまにか、彼の話術に嵌っている。だけど、この身軽さは、ちょっと危うい。本当の彼はいったいどこにいるのか。この物語の先を読みたかったな。叶わないのが残念だ。2020/08/18
syota
7
どんな役でも役柄になりきってこなしてしまう能力を生かして、ホテルの従業員として着実に成り上がっていくくだりが痛快。ただ、後半クックック教授と知り合ってからは、それまでの「ヴィルヘルム・マイスター」調がいきなり「魔の山」調に一変してしまう。セテムブリーニの哲学が教授の古生物学に変わっただけという気がしないでもない。それでも、国王の前で開陳する政治論やゾゾ相手の恋愛論などは、一見「魔の山」ばりの大議論に見えるものの冷静に読み返すとどこまで本気なのか微妙で、このへんは詐欺師クルルの面目躍如。2015/05/29
tieckP(ティークP)
6
たまたま翻訳の上下巻それぞれの最後にエロティックな展開が用意されているという理由なんだけど、すごく執筆に射精感があって、それがこの小説を未完に終わらせてしまったような気もする。終盤でいろいろ建築などについての説明を受けながら、上の空で女性のことばかり考えているあたり、実に高まっている感じがする。古生物への蘊蓄は「魔の山」を思わせるけど、個人的にはマンの「インテリ自慢」を後世に読んで気持ちよくなったことはない。とはいえ、マンの長編にしては重くはないし、パロディの軽快さが楽しく悲しく貫いていて相当好きな作品。2016/04/13
kaze
5
で、いつ詐欺師になるの?え、これが詐欺師ってこと?いやいやいや、ただの替え玉では?私はもっとこう色んな人物に化けるのかと思ってたんですけど、侯爵1人ですか?ていうか、世界漫遊しないの?いつまでリスボンにいるの?えー、ここで終わり?ズコー。って感じであった。いやー、話が進まないこと甚だしい。途中の長口舌が長いこと長いこと。マン節極まれり。疲れた。2020/02/22